施設出身者の進学後押し 受験費新設、支度費は2倍(こども家庭庁)

2024年0723 福祉新聞編集部

こども家庭庁は今年度から、児童養護施設で暮らすこどもの大学進学を大きく後押しする。これまで約20万円だった進学などへの支度費を2倍に増額。新たに受験料などの費用を最高で約16万円まで支給する。さらに5月には、県外へ進学した場合でも児童自立生活援助事業の対象となることを改めて周知するなど、卒業まで手厚くサポートする。

進学に向け学ぶ機会を増やす。措置費の中で、学ぶ環境を整備する「特別育成費」を5000円増額。私立高に通う高校生は、最高3万9540円まで授業料や習い事などに充てられる。スマートフォンを活用したオンライン学習も可能。

また、特別育成費の対象に、今年度から「大学受験費」を新設した。受験料や交通費などを最高15万8000円まで支給。合格後、教科書代や引っ越しなどの「大学進学等自立生活支度費」については、従来より21万円以上も増額。親から支援が受けられないなどの条件もあるが41万3340円まで支給する。

進学後も手厚く

同庁は5月23日、進学で県外に住む施設出身者が、児童自立生活援助事業を利用することについて、適切な援助を条件に「可能」とする見解を表明。自治体からの質問への回答として、ウェブ上にも掲載した。

児童養護施設が支援する場合、同事業の2.型として県外に住むこどもも1人分としてカウント。一般生活費や事務費なども同様に出るため、「運営費上の差異はない」(こども家庭庁家庭福祉課)という。こどもが県外に住む場合は、家賃は加算として実費が児童養護施設に支給される。

一方、同事業の1.型である自立援助ホームに、食料や洋服代に使う「一般生活費」を児童養護施設と同様の水準に引き上げた。従来1万1690円だったが、今年度から5万5270円と約5倍に増額している。

福井県は6月19日、県内の児童養護施設に対し、こどもが県外に進学した場合の具体的な支援内容に関する通知を出した。おおむね週1回以上、オンラインも含め連絡することを基本とした上で「状況把握のために、自宅へ出向き支援することも必要」との見解を示した。

2023年5月時点で全国の大学や専門学校などへの進学率は、全高卒者平均で77%。児童養護施設出身者だと39%と大きな開きがあるのが現状だ。家庭福祉課は「施設などで暮らすこどもの将来に向けた選択肢が広がれば」と話している。