未来志向の障害施設開所 地域に根差して共生へ〈東京光の家〉
2025年06月23日 福祉新聞編集部
今年で創立106年を迎えた東京都日野市の社会福祉法人東京光の家(石渡健太郎理事長)。基本理念「盲人に聖書の福音を」のもと、視覚障害者の自立訓練から就労、高齢期の生活まで総合的に支えている。12年前に地域のニーズを踏まえ、知的障害者の「光の家就労ホーム」を設立したのに続き、6月4日に未来志向型の「光の家ワーク・プレイセンター」を開所。障害者の活動環境の充実と地域共生に向け、法人の歴史に新たな一歩を刻んだ。
地域に愛されるカフェ
就労ホームでは1階で「Kitchen & Cafe Canaan(カナン)」(就労継続支援B型)、2階で紙すき作業や軽作業(生活介護)を行っている。
平日の昼食時にカナンを訪ねると、ゆったりとした店内に大きな窓から光が差し込み、主婦やOL、サラリーマンでにぎわっていた。働く職員、障害者も明るい。石渡理事長が「空間にこだわり、ドリンクバーにしてくつろげるようにした」と言うように、地域の人の憩いの場になっていた。1日約100人が訪れ、売り上げは年間約3000万円に上る。
メニューは人気の日替わりランチのほか、和洋中の約15品。スイーツも充実。もともと法人の施設の食事はおいしいと評判で、その味をカナンでも提供。注文は券売機で受け、厨房のモニターに表示されるなど、作業を効率化し、障害者が働きやすいよう工夫している。
ニーズに寄り添う
法人では視覚障害者の施設として「光の家新生園」「光の家栄光園」(障害者総合支援法)、救護施設「光の家神愛園」(生活保護法)を運営。入所者約200人が数十年間、安心して暮らせる支援体制を確立している。
その中で、就労ホームは知的障害者の福祉サービスとして初めての挑戦だった。「入所者のうち地元の人は少なく、法人の地域貢献が弱いと感じていた。地域のニーズを調べると、知的障害者の働く場が不足していた」と石渡理事長は開設の経緯を語る。その後、親の要望に応える形で四つのグループホームも開設。地域のニーズを探り、寄り添う姿勢を大事にする。
可能性を秘めた新施設
就労ホーム2階の作業室が手狭になったことから、隣地に開所したのが光の家ワーク・プレイセンターだ。敷地面積は約1350平方メートルある。

「光の家ワーク・プレイセンター」の外観
1階は障害者の食堂と一般客も利用できるカフェ。LED野菜工場もあり、レタスと食用花を栽培する。2階は作業室。3階は講堂と一般客向けのマッサージ室。4階はロッククライミング、ゴルフ、カラオケなどのプレイゾーンと、スヌーズレン室(光や音楽などで感覚を刺激してリラックスする)がある。
「地域に開かれた未来志向型の施設」。石渡理事長は開所式でそう説明した。さらに「さまざまな機能のある施設で、利用者にも地域の人にもいろいろな可能性を秘めている」と語った。
長きにわたり視覚障害者を支えてきた支援体制は今後も変わらない。一方、社会福祉法人は変わりゆく地域のニーズに応える責務もある。「先を読む力と決断力が福祉経営者に求められる」と石渡理事長は言う。