障害者文化芸術推進法の周知進まず 文化庁が劇場、音楽堂を調査
2025年03月12日 福祉新聞編集部
全国の劇場、音楽堂などのうち、障害者文化芸術推進法が職員間で周知されている施設は54%にとどまることが3日、文化庁の調査で分かった。前回調査(2020年度)より約10ポイント増えたが、同法が18年6月に施行されて6年以上たったことを踏まえると、周知が進んでいるとは言えない状況にあった。
調査は24年8~9月に行い、1439施設の回答を集計したもので、同日の「障害者文化芸術活動推進有識者会議」(座長=日比野克彦東京藝術大学長)に報告された。
多機能型トイレや車いす席などの設備は98%の施設が設置していた一方、筆談ボードや音声補聴システムなど、障害者が鑑賞や参加するための機材のある施設は48%にとどまることも分かった。貸館以外で障害者に配慮または対象とした事業をしている施設も31%と低調だった。
課題には人材やノウハウの不足が挙げられた。文化庁は今後、同法の説明動画を職員研修で活用するよう促し、先進事例の周知や人材育成プログラムの開発支援などに取り組むとしている。
同法は障害者が演劇、音楽などを鑑賞、創造したり、作品を発表したりする支援体制を整備するもの。現在、23~27年度の第2期基本計画に沿った施策が進められている。
会議では、厚生労働省から、障害者の文化芸術活動をサポートする「障害者芸術文化活動支援センター」が45都道府県で設置されたことも報告された。相談件数は5000件(23年度)を超え、障害者本人、福祉関係者以外に教育関係者や企業からの相談も増えた。
厚労省は28年度からの第3期基本計画の策定に向け、25年度に障害福祉施設を対象に文化芸術活動に関する調査を行う方針も示している。