障害者GHは「住宅」 マンション訴訟で和解(大阪高裁)

2024年0710 福祉新聞編集部

大阪市内の分譲マンションの一室を賃借して運営される障害者グループホーム(GH)は、住宅以外の利用を禁じた管理規約に違反するとした裁判の控訴審で1日、「GHは障害者の地域生活を支える住宅であることを確認する」とした和解が成立した。

大阪高裁(阪本勝裁判長)は障害者基本法の理念を引き合いに和解を勧告し、「本件各住戸はGH利用者の生活の本拠として使用されているから、GHとして使用することは管理規約に違反しない」との所見を付した。
また、和解に先立ち、マンション管理組合は今年6月に管理規約を改訂。消防法令に適合する障害者GHをマンション内に開設・管理する際の細則も作った。

大阪高裁の所見や和解条項、このマンションの管理規約・細則は、今後、同様の争いが生じた場合の判断材料になりそうだ。

防火点検で負担増か

管理組合がGHの使用禁止を求めて社会福祉法人(同市)を提訴したのは2018年6月。GHがあることにより、防火対象物の点検など消防法令に基づく管理組合の負担が増えることを主な理由とした。

22年1月の1審大阪地裁判決は負担が生じる抽象的な可能性に着目し「GHは管理規約の想定する住宅に当たらない」と判断。管理組合が勝訴した。

1審判決は立ち退きを強制できる仮執行は認めなかったため、障害者はすぐに退去する必要はないが、社会福祉法人は控訴した。

このマンションは15階建てで260戸。法人は03年8月以降、賃借によってGHを運営し、現在、2戸に知的障害の女性4人が住んでいる。

GHで暮らす障害者は全国で約18万人。都市部では一軒家のGHを造るのが困難で、集合住宅の1室をGHとする例が少なくない。

防火対策の負担を理由に集合住宅内のGHが認められないと、障害者の住まいの選択肢はさらに減ることから、裁判の行方は福祉関係者の間で注目されていた。