小さなケアで大きな成果

2022年0817 福祉新聞編集部

 今回は実際にポジショニングを実践するにあたり現場におけるケアのポイントについて説明します。
ベッドでのポジショニング

 

 (1)身体とマットレスの間に隙間をつくらない

 

 隙間が多くあるということは、支えている部分が少ないということであり、わずかに支えている部分に多くの圧がかかっていることになります。圧が強くかかっている部位は痛みが生じやすく、発赤はっせきや表皮剥離の原因ともなります。

 

 (2)できるだけ腰が反らないように注意

 

 無理に下肢を伸ばそうとすると、骨盤が前方へ傾き、腰が反った状態になってしまいます。反り腰になると、呼吸補助筋が機能しにくく息苦しさを感じたり、逆に筋緊張を高進させ拘縮を進行させてしまう場合もあります。膝を軽く立てて、股関節を軽度屈曲させることで骨盤が後傾し、腰の反りを解消することができます()。

 

腰のそりを解消

 

 (3)ねじれや傾きがないか確認

 

 骨にねじれが生じていたり、左右の肩と骨盤を結ぶ線が平行ではなく傾いていたりする姿勢を取り続けることは、強い苦痛を感じます。傾きを修正し、ねじれがより小さくなるようにしましょう。

 

 ちなみに、あおむけで仙骨をベッドに対して平らに接地させている状態で、上半身や足がどのような位置になるかを見ると、その人の身体のねじれや傾きを捉えやすいです。

おむつの使い方

 汚染されたおむつを長時間つけたままにすることは、皮膚がダメージを受け褥瘡を誘発することは言うまでもありませんが、漏れの不安からおむつを複数枚重ねて使用することも褥瘡のリスクを高くさせます。おむつを重ねることで股関節が開き、下肢が外側へ回旋されます。それによって骨盤はより後方へ傾き、仙骨部への圧が高まり、褥瘡の発生・悪化へとつながる場合もあります。ポジショニングにおいて、おむつの使用方法・排せつケアの視点は大変重要になります。

介助側の心がけ

 拘縮のある人に対して実際にケアやポジショニングを実施する場合、介助者は(1)ゆっくり(2)声をかけながら(3)できるだけ広い面で支える――ことがポイントです。介護される側にとって急に動かされることは恐怖や緊張を感じ、そのことで身体がこわばってしまったりする場合も多くあります。

 

 特に、つまむように身体に触れたり、指先に力を入れてつかんだりすると、痛みを感じ、逃避反射が出現、筋緊張が高進し、結果として拘縮の進行が助長されるケースもあります。

 

 介護職員にとっては当たり前のこととは思いますが、声を掛けながらゆっくりと、指先ではなく、できるだけ広い面積で支えることを意識して介助やポジショニングを実施することが重要です。

 

 第8回でも述べたように、褥瘡予防にはケアの積み重ねが必要です。そして、その一つひとつが大きな成果となっていきます。1回のケアではなかなか成果が見えにくく、難しい状況も多くあると思いますが、今日の小さなケアが明日の大きな成果となることは間違いありません。一度できた褥瘡を治すには非常に大きなエネルギーを要します。

 

 褥瘡予防の第一は「褥瘡をつくらないこと」。まずは予防です。少しでも「より良い状態」に向かえるよう、その方法を探って実践していきましょう。

 

筆者=宇都宮リハビリテーション病院 小平真希子

監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長。

 

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