芋掘りがつなぐ交流 救護施設利用者と保育園児(佐賀)
2024年12月26日 福祉新聞編集部佐賀県多久市にある社会福祉法人天嶺会(松永啓介理事長)が運営する救護施設「しみず園」(定員110人。常勤職員35人)。人口1万7000人ほどの小さな町で、しみず園が大切にしているのが、こどもたちとの交流だ。地元の多久保育園の園児たちとの芋掘りを通じた交流は2012年度から続いている。
芋掘りは、苗の植え付けから畑の雑草取り、芋の収穫と年に3回の工程で行われる。園児たちは、芋が苗の状態から関わることで食育として学ぶことができる。
利用者の精神的安定にも
掘った芋は、利用者が天日干しをしてから保育園に持っていく。園児たちは、家で芋掘りのことを話すことで、保護者にも救護施設の情報が自然と伝わっていく。
しみず園の真﨑靖行園長は「利用者は普段見せないような笑顔になる。精神的な安定に効果があることを感じる」と園児たちとの交流の影響を話す。ほかの職員も「芋掘りをきっかけにこどもたちの記憶に残ることがうれしい」と言う。
10月10日の芋掘り交流会では、4~5歳の園児が15人、利用者が20人参加して収穫した。利用者は「こどもたちとの芋掘りを毎年楽しみにしていた」。園児も「たくさんサツマイモが取れてうれしい」とそれぞれ楽しそうに話した。
1963年開設
しみず園は1963年10月に、佐賀県内の複数の精神科病院の院長たちが発起人となり、旧小城炭鉱付属病院(東多久町)に開設した。その後、2007年に現在の多久町に移転する。こどもたちとの交流は移転前にさかのぼる。
当時、カトリック教徒で寝たきりの利用者がいたことから、近隣で多久カトリック幼稚園を運営する神父に施設を訪問してもらい、祈りをささげてもらっていたという。
そういったつながりから、園児が毎年12月に行っているキリストの生誕劇と遊戯を、しみず園でも行ってもらうようになった。20人ほどの園児たちに加え、保護者も見学に来るなど、交流が発展していった。
施設移転後も交流は続くが、多久カトリック幼稚園は12年に閉園。こどもたちとの交流が利用者に及ぼす影響を考慮し、職員の家族が通っていた多久保育園と交流することを決め、現在に至っている。
福祉人材の種まきも
真﨑園長は「過去にしみず園と交流をしたことのあるこどもが成長して、介護実習や就職活動で施設見学に来てくれたこともある。こうした縁を大切にすることで、さらに地域に根差した施設にし、福祉人材の種まきも行っていきたい」と話している。