事前復興としての福祉〈コラム一草一味〉

2026年0902 福祉新聞編集部

社会福祉法人佛子園 理事長 雄谷良成

 今回の熊本地震に接し、能登半島地震から2年8カ月を迎えた今だからこそ、改めて実感することがある。当然ながら、災害は時間とともにフェーズが移り変わる。

 発災直後の救急救命期は、1人でも多くの命を救うことが最優先となる。DMAT(災害派遣医療チーム)やDWAT(災害派遣福祉チーム)をはじめとする専門チームが、専門性を発揮することは欠かせない。こうした体制は着実に整えられてきている感がある。災害救助法で福祉的支援が救助に位置付けられた意義も、まさにここにある。

 一方、災害は応急対応で終わるものではない。能登では今、仮設住宅の統廃合が始まり、そこでようやく築かれた人間関係が再び分かれようとしている。元の集落でも、住宅の倒壊や転出によって人が抜け、日常を支えてきた近所付き合いや地域活動そのものが難しくなっている。住まいだけではなく、関係性そのものが失われていく。仮設に残る人の中には、自力での生活再建が難しい人も少なくない。再度の引っ越し、生活環境の変化、人間関係の再構築は大きなストレスとなり、孤立や心身の衰え、さらには災害関連死にもつながっていく。

 東日本大震災では仮設住宅の撤去まで8年を要した。熊本も時間の経過とともに、いずれ同じような課題に向き合うことになるだろう。

 その時に求められるのは、人を孤立させず、人と人とのつながりを支え、地域の復興力を育てていく福祉の専門性である。社会福祉法改正で「福祉の中に防災」が位置付けられた意味もそこにある。福祉は応急支援だけでなく、復旧、復興、そして平時の地域づくりまで切れ目なく伴走することが期待されている。

 事前復興とは、道路や堤防などの整備だけを指すものではない。平時から地域のつながりを育み、災害が起きても人を孤立させず、復興を通して地域をよりしなやかで持続可能なものへ育てていくことではないか。その役割は、住民と日常を重ねてきた地域の福祉関係者だからこそ果たせるものがあるように思う。

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