福祉と環境は切り離せない〈コラム一草一味〉
2026年06月21日 福祉新聞編集部
恩賜財団済生会 理事長 炭谷茂
職場近くの東京都港区立芝公園で昼食を食べることが多い。東京タワーの下で広々と芝生が広がり、爽快な気持ちになる。保育所のこどもが、保育士に見守られながら、いつも元気に遊び回っている。こどもには保育所の狭い部屋よりもずっと楽しそう。
旧厚生省で保育所を所管する課長を務めたときに、1990年から施行の第1次保育指針改訂作業に従事した。保育内容について従来6領域(健康、社会、言語、自然、音楽、造形)から5領域(健康、人間関係、環境、言葉、表現)に改正された。保育指針制定以来25年ぶりの大きな見直しだった。
この改訂では、「環境」を保育の重要事項に位置付けたことが良かった。こどもの成育には環境が重要な要素である。
松山市にある済生会松山乳児保育園は、ゼロ歳児から2歳児までを対象に定員60人である。「こどもたちは小さな原始人である」をモットーに掲げている。園庭にはすべり台やブランコのような遊具や三輪車など人工的な物はない。水、砂、土、石、木、動植物などの自然素材だけで遊ぶ。自然との関わりを深めながらこどもたちは、感性、意欲、創造性、社会性を育みながら成長していく。環境の効果を十分に活用している。
福祉関係者は、一般的に環境に対する関心が薄い。しかし、本来は、環境と福祉は、大変関係が強い。
例えば、貧困と環境の関係は切り離せない。貧困に陥ると住環境が悪化し、健康を害し、貧困は一層悪化する。内務省が18(大正7)年に設置した救済事業調査会は、このことに着目をして対策が検討された。これと類似した状況は最近、日本の各地で見られる。また、地球温暖化の進行によって熱中症で倒れる高齢者が多くなっている。
私は、川崎医療福祉大学長だった江草安彦先生や、国立国際医療センター総長だった鴨下重彦先生らの指導を得て、2004年に環境福祉学会を立ち上げたゆえんもここにある。福祉関係者は、環境問題に関心を深め、福祉の向上に役立ててほしいものだ。

