福祉施設の老朽化対策〈コラム一草一味〉

2026年0705 福祉新聞編集部

宝山寺福祉事業団 理事長 辻村泰範

 高齢者施設に限らず、多くの福祉施設が老朽化の波にさらされている。全国社会福祉法人経営者協議会の春の研修セミナーで、老朽化対策を取り上げた。施設設備の経年劣化はいつも頭にこびりついているのだが、何かモヤモヤとしたものが付きまとっていた。

 講師が指摘したのは、施設の「社会的老朽化」の視点であった。物理的老朽化より、むしろ社会的老朽化や陳腐化が問題かもしれない。

 社会の変化は目まぐるしい。人口構造や産業構造の変化は福祉施設にも大きな影響を与えている。地域によっては急激な人口減少により、利用者の減少に加え、施設を支える職員の確保も難しくなっている。

 しかし、私はこのことをもって施設の社会的ニーズが大きく変わったとはみていない。施設の対応力が試されている。陳腐化とは対応力の貧困さではないか。

 我々は改めて社会の変化や福祉需要の変化に目を向ける必要がある。

 施設の老朽化対策とは単なる建て替えや改築改修の問題ではない。地域課題を見据えた施設再生計画でなければならないと思う。多角化、多機能化とは、この意味で地域の面的需要をとらえた可変性の高い施設改修計画を立てることに帰する。

 経営協では人口減少や都市部と地方の需給ギャップ問題、経営課題の解決方法として、経営の多角化や多機能化を掲げてきた。国は相変わらず経営規模の拡大、統合の旗振りを続けている。視点がずれているのだ。結果としてはあり得るが、社会福祉法人の経営方針として掲げることには慎重であるべきだ。

 施設整備には多額の費用が必要である。老朽改築については機能見直しに応じた改修や、緊急時対応を視野に入れた大胆な施策を期待したい。医療政策がそうであるように、増床に視点を置くのではなく、減床であっても多角化・多機能化へと大きく視点を変えて旗を振ってもらわねばならない。

0 Comments
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る