盲人の偉人を絵本で紹介 シリーズ8冊目は宮城道雄〈桜雲会・東京〉

2025年0530 福祉新聞編集部
絵本シリーズ宮城道雄

点字出版を主力事業とする社会福祉法人桜雲会(一幡良利理事長、東京都新宿区)は、2018年から毎年出版している絵本シリーズの8冊目となる「現代邦楽の父宮城道雄」(カラー49ページ、2500円)を発刊した。

道雄(1894~1956)は8歳のころ医師から失明宣告を受け、箏の道に進むと、厳しい修行を乗り越えて14歳で作曲家デビュー。22歳の若さで「大検校」となり、箏曲地歌界の最高位に就いた。十七絃や八十絃の新楽器も開発した。

そんな道雄の一生を宮城道雄記念館資料室長の千葉優子さんが文章でつづり、絵は日本画家の吉澤みかさんが当時をイメージして描いた。音読するときのために絵の注釈文もあり、海外の人にも知ってもらうため、巻末に英訳も付いている。

絵本シリーズは日本児童教育振興財団の助成金で制作。これまでに盲人女性の地位向上に尽くした斎藤百合(1891~1947)ら、主に一般的になじみのない人物を取り上げてきた。一幡理事長は「視覚障害のある偉人を紹介する絵本はほとんどない。こどもから大人まで幅広く知ってもらいたくて絵本にした」と言う。

また、絵本シリーズ発刊後には、偉人の生誕地や、ゆかりの地などをたどるバスツアーも開催。今回も11月29日に道雄の墓巡りや講演会などを行う。

「偉人の記録を残しておくことが大事。数十年後にヒットするかもしれない」と一幡理事長は期待を込める。


桜雲会 1892年に東京盲唖学校の盲生徒の同窓会として発足。現在、年5冊程度の点字出版のほか、デジタル録音図書の製作、省庁や自治体の広報紙の点訳・音訳、視覚障害者向け日常生活用具の販売などを行っている。職員は16人で、半数は視覚障害者。