学びの居場所、自分たちで〈コラム一草一味〉
2026年06月13日 福祉新聞編集部
日本福祉大学 客員教授 後藤芳一
5月に新しい集まりを始めた。名前は「ニーズ型社会と新産業創出研究会」。会場は名古屋市市政資料館、朝ドラ(女性裁判官の先駆け)を撮った歴史的建物だ。
12人の過半が医療専門職(看護職が3人)、ほかに医薬卸、A大博士課程の院生、B大修士の院生、製造業4人(中小の経営者など)。80代から30代まで、半数が60歳以上だ。週末の午後、自己紹介、社会ニーズの俯瞰、縮約(論文を短く約す)、1人が発表して3時間半だった。
筆者は1999年から今春まで日本福祉大の大学院で講義した。10人ほどのゼミだ。不思議なことがあった。第1に、修士を得た後も続けて来る人たちがいた(大学は大目に見てくれた)。第2に、静かに聴講していて「ここにいると『癒やし』になる」と言った看護部長がいた。別の看護局長も同じことを言った。第3に、受講者1人が他界したとき、ゼミ生の多くがお通夜に来た。
お通夜の時に少し分かった。みな日ごろ不条理のなかで一杯に務めている。ゼミはその逆で理屈と論理で動き、実践を理論で確認し、ずれた物差しを修復する。頭のヨガ、参禅のような場なのだった。何人かが「活動を続けよう」と動いてこの会ができた。
長寿化や社会の複雑化で、心身や暮らしの悩みは日々に新しい。大きく明確になれば注目される傍らで放置される課題もある。生存権や人権問題に真っ向から、ではないので「福祉」や「社会事業」とは呼べないかも知れない。ただ「関わりを求める人がいる→課題の全貌は見えない→実践しつつ考える」というところは先達がしてきたことと通じるかも知れない。
始めてみると追加の参加希望が4人。大学の役員(経営)、大学院新入の院生(大学院での学び方)などだ。C大の学長は懇親会へ参加を希望。研究会は毎回懇親会をする。これが目的の人もいそうだ。ただ、伊勢神宮があってのおかげ横丁だ。なので研究会はちゃんとやる。名古屋で年に4回、ほか1回は有志で東京に遠征して開く。居場所は自分たちでつくる。誰かが見ていて輪が広がる。

