政策のイデオロギー〈コラム一草一味〉

2026年0131 福祉新聞編集部

後藤芳一 日本福祉大学 客員教授

 政権が「強い経済」を目指している。ただ、社会保障も手当てしているので、〝成長か分配か〟とか〝経済かその他か〟とは少し違う。財政が釣り合う範囲で考えるか、先に投資するかの選択だ。ここで投資とは困り事(例=物価高、社会保障)への手当てや成長環境の整備であり、投資で成長サイクルをつくる。今の政権はこちらだ。

 均衡財政と成長投資はともにイデオロギーだ。イデオロギーとは目指す価値であり、その実現に向けた路線だ。日ごろは政治や理念の世界の言葉だが、その分野だけの専売特許ではない。均衡財政論者には政治家、経済学者がいて中心に財政当局がいる。行政組織にも担当する政策に応じてイデオロギーがある。

 私事にも経験がある。毎年公表されている福祉用具の統計では「福祉用具(狭義)」は日本福祉用具・生活支援用具協会、「共用品」は共用品推進機構、二つ合わせて「福祉用具(広義)」としている。

 福祉用具法(1993年)のもと、筆者は通商産業省(当時)の初代室長として関わり、最初に統計をつくった。その際(1)規模(2)将来予測を高い数字になるよう定義した。(1)は眼鏡(福祉用具の3割を占める)とかつらを含めた。眼鏡は補聴器、かつらは義眼と対応する。(2)は6兆円余(2005年)とした。当時の足下の8000億円(福祉用具〔狭義〕、1995年)にバリアフリー投資を見込んだ。結果は3兆9600億円(2005年)を経て4兆円を超えた。この規模をみて自動車分野から参入があり、市場が自律発展して技術やデザインが進歩し、利用者の選択肢が広がった。

 平時に確実に事業を行うのであれば結果の一致(Prediction)が仕事だ。ただ、これは事業の運営であって政策立案ではない。一方、前例がない中で道を開くにはリスクを取って先の姿を描き(Planning)、社会の意識や行動を変える必要がある。

 「ビジョン」や「先行投資」は元は産業経済での関心事だった。人口減少、高齢化、国際政治がゼロサム化する中で社会の活力を持続するため、国を挙げてイデオロギーの入れ替えを試している。「政策」はどの組織にも必要だ。年の初め、各持ち場でイデオロギーの再点検はどうか。

0 Comments
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る