福祉社会の中核は中間組織〈コラム一草一味〉

2026年0214 福祉新聞編集部

炭谷茂 恩賜財団済生会 理事長

 私が大学生だった60年ほど前、福祉国家論が出版されるようになった。大半は、資本主義が生んだ問題を隠蔽いんぺいする役割だという福祉国家の否定論だった。私は、北欧の生活経験のある人の本に刺激を受け、福祉国家こそが日本の進むべき道だと確信した。

 その志を抱いて旧厚生省に入省した。当時の同省では厚生行政の長期構想の類いがまとめられ、福祉国家を目指す雰囲気が漂っていた。

 しかし、実現に向けた行動は何も起きず、いつも作文に終わっていた。私は落胆を繰り返すだけで、「お役所仕事は、こんなものなのか」という諦めの気持ちになった。

 そんな気持ちを引きずっていた1976年に、10カ月間、福祉国家の成熟期にあった英国の社会保障調査に派遣されたのは、幸運だった。

 自治体を訪問するうちに福祉の神髄をつかんだと感じた。どの自治体にも教会を中心としたコミュニティーが形成されており、高齢者や障害者らはボランティアの援助を受けながら暮らしていた。そして、必ず長い歴史を持つ慈善団体が活動していた。

 自治体にはソーシャルワーカーや保健師らが活動していたが、民間は負けていない。私の計算では総活動時間では、ボランティアと福祉部門の公務員はほぼ同じだった。福祉国家は、公がすべてを担うのではなく、慈善団体やボランティア団体などの中間組織が担う力が大きい。

 他のヨーロッパ諸国も同様である。ドイツやオランダでは教会や労働組合、イタリアでは協同組合が、現在でも福祉、医療、教育の分野では公以上の役割を果たしている。

 それに比べて日本の中間組織の現状はどうか。ボランティアや住民団体は、発展途上。社会福祉法人も中間組織だが、行政にすべてを依存したり、行政の下請け機関と見られるような存在ではなく、自ら地域社会のニーズを見つけ、行動する姿勢がないと本当の中間組織とは言えない。

 今後、日本が福祉社会となるためにはヨーロッパに負けない中間組織の成長が不可欠だ。

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