都が介護保険で訴え 物価スライド方式など提言
2025年12月07日 福祉新聞編集部
東京都は11月28日、急激な物価高騰と深刻化する人材不足を踏まえ、介護保険制度の見直しを求める緊急提言を発表した。団塊世代が後期高齢者となる中、介護事業者の経営環境が急速に悪化していることから「保険料を払ってもサービスが受けられない事態になりかねない」と強調。物価スライド方式による介護報酬の在り方を検討するよう求めた。
2000年の制度導入以降、介護報酬は介護事業経営実態調査などに基づくサービスごとの収支差率を基に改定されてきた。そのため要望書は、物価高騰による経費の増加は、報酬改定で十分に反映されてきたとは言い難いと指摘。報酬が3年間変わらないことも課題だとしている。
こうしたことから、基本報酬は人件費だけでなく、経費の増額も適切に算定し、再構築するよう要望。その際、介護職員の処遇改善加算などは基本報酬に組み込むことも求めた。
さらに物価や賃金の上昇にも適切に対応できるよう、3年間の上昇分を見込んだ単価設定や物価スライド方式など、介護報酬の在り方を検討することも提案している。
このほか提言は、介護人材不足を踏まえた効率的なサービス提供を検討することも求めた。具体的には、複数の訪問介護事業者が連携してサービス提供できるような仕組みを挙げた。さらに煩雑化した運営基準や加算などを見直し、負担を軽減することも訴えた。
同日の会見で小池百合子都知事は「物価や賃金の上昇が介護報酬に反映されておらず、介護事業者の経営環境は大変厳しい」と述べた。その上で、効率的なサービス提供に向けて、制度の構造的な課題を解決する必要があるとの認識を示した。

