更生と福祉が協働研修 出所者の幸せ目指す〈堺市〉

2025年1007 福祉新聞編集部
更生支援と地域福祉支援の関係者が参加。全員に修了証書が贈られた=9月16日、堺市総合福祉会館

刑務所の入所、出所時に、誰がどんな支援をしているのか。更生支援や地域福祉支援に関わる専門職が、互いの仕事を理解して支援のバトンをつなぐきっかけをつくる、ソーシャルワークの協働研修が9月9日と16日、堺市総合福祉会館で行われた。参加者約80人のうち、約20人が刑務官ら更生支援の専門職。制度や分野を越境した研修となり、「これほどの規模は初めて」(弁護士)。出所者の幸せづくりの新たなステージが幕を開けた。

共催者は、堺市、堺市社会福祉協議会、大阪府地域生活定着支援センター(山田真紀子所長)。関西大人間健康学部の所めぐみ教授の研究室の協力で、21人の更生、福祉の専門職が企画者となり、3月ごろから準備に入った。

6月から月1回、21人の企画者会議を行い、その議論を、所さんや堺市地域共生推進課、堺市社協、山田さんら5、6人のコア会議で集約する形で進められた。

多彩な顔ぶれ

協働研修には、更生支援から大阪刑務所(堺市)▽大阪保護観察所堺支部▽西日本成人矯正医療センター▽大阪少年鑑別所▽近畿矯正管区の職員らが参加。

地域福祉からは、堺市の地域包括支援センターや障害者基幹相談支援センター▽障害者就業・生活支援センター▽各区役所の地域福祉課、生活援護課、子育て支援課▽社会福祉法人や福祉事業所の職員が参加。弁護士や保健師、スクールソーシャルワーカーや保育士などの多様な有資格者らが参加した。

更生支援と地域福祉の双方に関わる大阪府地域生活定着支援センター(事務局=大阪府社会福祉会館内)からも4人が参加した。

刑務官、福祉専門官の寸劇も

1日目は地域福祉と更生支援の現状を学ぶセッションや、自他の価値観をさぐって仲間づくりにつなげるディスカッションなどを実施。2日目は「支援のバトンをつなぐ」をテーマに、更生施設の現状を知り、参加者自身の仕事や所属する組織の役割を考えるセッション、刑務所に入所する際の入り口支援と出所時の出口支援を知るワークショップなどを実施。刑務官や福祉専門官による、入所者との面談の様子を再現した寸劇も披露された。

両日とも、「対等な関係」「批判しない」「お互いに反応する」を約束して、職種、経験年数、役職などの垣根を越えて、「聞き合う」「学び合う」「高め合う」のスタイルで、「理解する」「実感する」「やる気になる」を目指して研修した。

共通認識の醸成がテーマ

「矯正された空間(司法)と自己決定の空間(福祉)では、支援のステージ、スタンスが違うから、共通認識をどう合わせるかが企画者会議のテーマの一つになりました」

研修の進行役も務めた、山田さんはこう話した。

「こんなに人ひとり(受刑者)に、いろんな人が関わっている……まさに『支援のバトン』のつながりがあることを、一連のセッションで、みんなで確認できたことは大きかったと思います。自分だけが頑張っているんじゃなくて、更生支援にも地域福祉支援にも、同じ思いを持ったプレーヤーがいる……」

市社協独自の研修機能

堺市は2015年に、研修センター機能をつくった。研修を進めるうちに、座学だけではなく、受講者自らが企画者となる「学びあう主体的な研修」を18年から独自に始めた。

専門職が職域を越えて横断する研修を「導入編」▽地域住民同士が学び合う研修を「対話編」▽専門職と地域活動者が学び合う研修を「創造編」と呼んで、この三つを回しながら、地域福祉人材をつくっている。

今回の協働研修は、「導入編」を進化させた「越境編」の最初の試みだった。

更生支援関係者と協働できたのは、昨年11月に大阪保護観察所や大阪刑務所など堺市を含む7団体で「堺市における再犯防止及び更生支援の推進に関する連携協定」を全国に先駆けて結び、関係性をつくっていたことも大きかった。

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