【大正大・下】地域との深い関わり大切に

2026年0224 福祉新聞編集部

人間学研究科の創設
大正大学大学院・社会福祉学専攻の開設は吉田久一、重田信一とも旧知の吉澤英子東洋大教授を招き、小松源助はじめ平山宗宏や三和治の教授陣も迎え、文学研究科に社会福祉学専攻の修士課程開設(1997年)に続き、人間学研究科(2001年)の創設により修士課程の社会福祉専攻と博士課程の福祉・臨床心理学専攻として博士前期・後期課程の教育一貫体制が整う。常に地域と連携する実践・研究・教育の循環を見据えた実践的な展開を模索し続けている。その礎をつくったのが、全学部に大学院を開設する機運を高めた柏木正博専務理事と研究科初代専攻長の吉澤英子名誉教授である。
当初の大学院教育は、地域基盤の社会福祉研究と実践を循環する研究指導(実践分析研究)を中心に据えた。また実証実験でもあったコミュニティ拠点づくりのNPO法人「大正さろん」(現在廃止)の運営に教員と院生らが取り組み、その実績から豊島区(人口24万7000人)との協定によるコミュニティ・ソーシャルワーカーが大学院で学び、学部学生は乳幼児から高齢者まで世代を超えた交流の場=「区民ひろば」で、コミュニティ・ソーシャルワーカーの指導を受けて学ぶ、双方向の教育プログラムとして運用。その学部教育と大学院教育の一貫体制をけん引したのは石川到覚名誉教授。18(平成30)年には大正大学社会福祉学会主催の「社会福祉学研究室100周年記念大会」の開催と『100年史』を刊行した。

高橋秀裕学長

豊島区と包括協定
14(平成26)年から豊島区との包括協定「としま共創事業」をスタートさせた。豊島区社会福祉協議会のコミュニティ・ソーシャルワーカーが「区民ひろば」(26カ所)で地域住民との関わりを通じ、社会福祉学の学びを深めるサービスラーニング教育プログラムを展開。その導入教育の学習を支援するコミュニティ・ソーシャルワーカーが大学で科目履修するスーパービジョン教育に併せて、「制度ができても動かすのは人。学生にはそこで必要とされる人に」と話す神山裕美(ひろみ)教授(60・学科長)と石川名誉教授が学内外で養成教育を担っている。
宮崎牧子教授(60・人間学部長)は、地域拠点であった「大正さろん」を引き継いだ地域活動の学生プロジェクト〝学生出前定期便〟を展開。そして「開校以来、ことのほか地域との関係を伝統として大切にしてきました」と語る。また松本一郎准教授(52・教務主任)は、「時代背景や社会構造の中で弱い人のところに貧困リスクが集まる。それは科学的研究からも明らか。この点を理解し、支援できる人を育てたい」と語る。さらに精神保健福祉士養成を担う坂本智代枝(ちよえ)教授(58)は、「長い歴史の中、多くの卒業生や大学院修了生が大学の教員および社会福祉をけん引し、地域の実践現場で学生の実習教育を担ってくれることが大正大学の強みです」と語る。
社会福祉学科の教育に裏打ちされた人材は、100年の歴史から数多く輩出されている。近年の卒業生の中には社会福祉士と精神保健福祉士の両資格を取得する者も多い。児童相談所で働く男性(31)は「その地域の特徴を踏まえて、相談者の背景やニーズに対応すること」を強調。また社会福祉協議会で働きながら大学院でも学んでいる女性(25)は「多世代が集まれる、みんなに見守られ安心できる居場所を地域につくりたい」との思いを抱く。社会福祉学科4年の男子学生は「オレンジリボン運動の学びを通じて児童虐待を防ぐソーシャルワーカーになりたい」と希望を語る。同じ4年の女子学生は「誰もが暮らしやすい地域社会を目指して高齢者施設に就職します」と歯切れが良い。開校以来の伝統である地域基盤の社会福祉実践・教育・研究は地域共生社会を推進する次世代へと引き継がれている。

 

大乗仏教の精神
26(令和8)年の創立百周年を前に高橋秀裕(しゅうゆう)学長(67)は社会事業研究室の創設者に思いを馳せながら「その精神を継承、体現しているのが社会福祉学科です。大学として大乗仏教の精神をもって最新のデジタル技術を活用し、内外により開かれた大正大学を目指します」と熱く語った。

(高野進)

0 Comments
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る