地域での多職種連携協働 ~地域生活・介護に必要な視点〈高齢者のリハビリ 84回〉

2024年0322 福祉新聞編集部

今回は地域における多職種連携協働について、在宅生活に携わる専門職が、どのような視点で協働していくことが求められるのかを紹介します。

 

Aさん、83歳男性。自宅で妻と2人暮らしをしていました。3年前から軽度の認知症状が出始め、最近では散歩に行くと週1回は迷子になり、家に帰れなくなりました。妻は病院に連れて行こうとしましたが、本人の受診拒否もあり、自分が見ていれば何とかなると考え、無理には連れて行きませんでした。近隣の介護老人保健施設の予防体操に夫婦で参加して、予防に取り組んでいました。

 

3カ月ほど経ち、妻が自宅で転倒しました。腰の痛みが徐々に増強し、ついに動けなくなりました。こどももいないため、妻は誰にもSOSを出せずにいました。

経過(対応)

予防体操を運営している介護スタッフは、いつも2人で通っているAさんたちの欠席が続いていることに気づき、同じ予防体操に通う民生委員に相談し、一緒にAさん宅を訪ねました。

 

Aさんは妻が動けなくなったことでSOSもできず、孤立した生活を余儀なくされていました。介護スタッフは同じ施設併設の地域包括支援センターに相談し、Aさんの安全を確保できる環境をつくり、妻が受診、治療に集中できるよう専門的支援が開始されました。

 

このことがきっかけで、Aさんは介護保険サービスを導入し、デイサービスにも通い始めました。妻の治療が落ち着いた後は予防体操も復活して、2人の生活リズムを再構築することとなりました。

専門職の視点

 

今回のポイントとして(1)地域との接点(近所の友人、自治会、老人会、民生委員など)(2)医療・介護予防に携わる専門職の視点(Aさん夫婦が通う予防体操の介護スタッフ)(3)面の連携(ネットワーク)の三つが挙げられます。

 

(1)~(3)が確立することが地域包括ケアシステムの構築につながると考えますが、(2)が確立することで、(1)と(3)にも反映され、この夫婦の危機を早期にキャッチして支援につなげられる可能性も高くなります。

 

(2)の専門職の視点とは、地域の課題と特性を見極め、ネットワークをつくる視点です。自身の専門職性を生かし、クライアントの異変に気づいたときに、適切な相談機関につないでいく力を発揮することが求められます。

 

にあるように、社会資源の一つとして専門職が機能し、(3)の面の連携・ネットワークにつなげることにより、Aさん夫婦だけでなく、地域住民の生活を支えていくことにつながっていきます。

 

そして、専門職だけでは取り組めることにも限界があるため、個人で抱えないこと、ネットワークをつくり、その力を借りて、諦めない支援を継続していくことが大切です。

 

筆者=小又明子 五反田リハビリテーション病院 主任 医療ソーシャルワーカー

監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長