車いすの選び方とフィッティング〈高齢者のリハビリ 54回〉

2023年0728 福祉新聞編集部

 車いすの選び方についてですが、そもそも車いすにはどんな種類のタイプがあるのか理解しておく必要があります。病院や施設で使用する車いすのタイプは大きく分けて三つあります。

 

 一つ目は、普通型車いすです。このタイプの車いすはオーソドックスな形となっており、誰でも一度は見たことがあると思います。メリットとしては、ほかのタイプと比較して軽く、安価であることです。デメリットは、部品の取り外しや変更ができないことです。

 

 二つ目は、モジュラー型車いすです。車いすを構成する部品の一つ一つが良質な部品で構成された車いすになります。そのため、メリットとして、各パーツの取り外しや高さの変更も行え、利用者に合わせて調整ができるようになっています。車輪の取り外しが簡単にできるものもあり、乗用車に積む場合はコンパクトになり非常に便利です。デメリットは部品によっては重く高価なものが多いことです。

 

 三つ目は、ティルト・リクライニング車いすです。ティルト(座面角度調整)とリクライニング(背もたれ角度調整)の機能を備えています。メリットは座位保持が難しい方でも離床できることや血圧変動に対応が可能です。デメリットは車いすが大きく、重く高価であることです。リクライニングで背もたれのみを倒した場合は、臀部が前に滑り落ちて仙骨座りとなりやすく、座っていて苦痛です。背もたれの角度に合わせて座面の角度も調整できるティルト機能が付いていることが重要です。

 

リクライニング車いすとチルト・リクライニング車いす

 

 車いすの選定に関しては、一般的に座位が困難な場合はティルト・リクライニング車いす、座位が可能な場合は普通型車いすかモジュラー型車いす、というように考えてよいかと思います。大切なことは、車いすの基本的な特徴を理解した上で、利用者の体格、体形などに合った車いすを選定、調整する「フィッティング」が必要だということです。

 

 フィッティングは生活場面や環境に応じて考えます。食事をするとき、車いすを駆動するとき、離床して休んでいるとき、それぞれの生活場面に応じて座位の姿勢をより良い状態にしていくことがフィッティングの重要なところです。

 

 フィッティングがうまくできていないと、臀部が前へ滑っている姿勢、体幹が左右に傾いている姿勢、円背(猫背)が強くなる姿勢となり、嚥下障害・関節拘縮・褥瘡・疼痛・疲労などの二次的な障害につながります。

 

 利用者に応じて適切な車いすを選定し、座面のクッションや体幹を保持するマットなどを使いながら、より良いフィッティングを目指したいものです。

 

筆者=鴛海宗一朗 赤羽リハビリテーション病院 

監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長

 

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