里親支援の最前線 慈愛園(熊本)、ネットワークづくりも視野に
2023年03月28日 福祉新聞編集部かつて全国の自治体で里親委託率が最下位を記録した熊本県。現在は県内の児童相談所ごとにフォスタリング(里親養育包括支援)機関を委託し、施設などを巻き込みながら里親を重層的に支える「熊本モデル」を進めている。前週に続いて、実際に2020年12月からフォスタリング機関を担う社会福祉法人に現在の状況を聞いた。
2年で50世帯増
「登録数を増やすのに近道はない」――。
活動を振り返り潮谷佳男・同園乳児ホーム施設長はこう話す。
同園は国の動きを見据え、19年に養育家庭支援センターきらきらを立ち上げ里親の居場所づくりを行っていた。そうした活動も評価され、20年12月に熊本県からフォスタリング機関を受託した。補助金は年4300万円だった。
きらきらで働くのは7人で、うち5人が40代以上。「法人の中核を担うベテランをそろえた」(潮谷施設長)という。役割は相談員が3人で、そのほかに研修やリクルートを担う職員がいる。
「当初は施設との連携を重視した」と話すのは、きらきら統括責任者の山川浩徳さん。従来から施設には学校や地域ともつながりがある里親支援専門相談員が配置されていた。そのため施設に出向き「今まで通り最前線の活動をお願いしたい」と協力を求めたという。
弱みも受け止める
一方、里親の広報活動はノウハウがなく、最初は苦労した。
まずは担当地域の中から重点地区を4カ所指定し、市役所や大型商業施設で里親に関するロビー展示を実施。市の広報誌や民間のフリーペーパーなどにも協力してもらった。
並行して、定期的にオンライン説明会を開き、興味を持った理由や、里親のイメージなどを聞いていったという。その後、改めて里親のパンフレットを郵送。数日後、再度電話するなど段階的に温度感を探る戦略を取った。
山川さんは「里親は無理やりなってもらうものではないため、まず制度を知ってもらうことを心掛けた。その人の強みも弱みも受け入れ、気持ちに寄り添うことが大切」と語る。
2年にわたる活動の結果、53世帯の里親登録につながった。説明会を希望した人の半分に当たるという。
地域づくりを模索
現在の課題は、受託する前から里親に登録している「未委託里親」との関わりだ。
自らリクルートした人たちとは異なり、面識がない。これまで里親登録をされない理由についてもお互いに分からなかった。
そのため3人の相談員がすべての自宅を訪問し、近況や里親のイメージなどをヒアリングし、関係づくりを行ったという。
また、フォスタリング機関を担う中で、長期的には県内の子育て支援を行うNPO法人などとの連携強化の必要性も感じている。
山川さんは「長期的には里親を地域で支える体制づくりこそ必要だ。地域の子育て支援団体も含めた民間のネットワークづくりも視野に入れながら活動できれば」と話す。
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