大阪・枚方市に新たな児童養護施設が誕生へ 切れ目のない支援を〈大阪水上隣保館〉

2026年0302 福祉新聞編集部
開設に向けて工事が進む児童養護施設

 人口約39万人の大阪府枚方市に今春、社会福祉法人大阪水上隣保館(同府島本町)が定員36人の児童養護施設を開設する。2030年には同市が、中核市として児童相談所を開所。それに合わせて、乳児院も開設する。施設の空白地帯だった枚方、交野、寝屋川市などの府北東部での新たなうねり。「こどもたちに切れ目のない支援をしたい」。国の指針「家庭的養護」を踏まえながら、創立95年の歴史ある法人の新時代が始まる。

 大阪水上隣保館の原点は、1931年、牧師の中村遙、八重子夫妻が大阪市港区で水上生活者や港湾労働者のこどもたちのために創設した「水上子供の家」。日本初の水上生活者を支える福祉施設で、医療事業も行った。

 戦災で焼失し、戦後は大阪と京都の境、島本町の山麓に拠点を移動し、児童養護施設「遙学園」を設立した。

架けた社会的養護の橋

 枚方市は、遙学園とは淀川を挟んだ対岸にある。府北東部を管轄する児相「大阪府中央子ども家庭センター」内に含まれる。

 これまで同市を含む管轄内には児童養護施設はなく、こどもの多くが地域を離れた遙学園に措置されていた。

 大阪水上隣保館は「こどもは生まれ育った所で育つのが理想」として22年前、「施設入所に至る手前でこどもたちを救おう」と市から提供された元公立幼稚園の敷地を再利用し、子育て短期支援利用事業所「ファミリーポートひらかた」を開所した。

 名称には「家族という船が碇いかりを下ろし十分休息できる港」という意味を込めた。こどものショートステイを行い、未就園児の親子の通所スペースとして週5日開所する「つどいの広場」(のちの子育て支援拠点事業)も始めた。

 ファミリーポートの年間利用者数は当初の2倍以上(約700人)になった。親子が短期間でも距離を置くことで、ネグレクトや虐待を防ぎ、家庭で子育てを続けられるケースも増えた。

 さらに市内に、里親支援センターも開設した。

クジラ育英会が全面協力

 4月にオープンする児童養護施設「クジラハウス」は定員36人のユニット型施設だ。公益財団法人クジラ育英会の公募で、運営事業者に選ばれて実現した。国の補助金を使わず、クジラ育英会が全額出資。3階建ての施設内に、家庭的な雰囲気に配慮した6人のユニットが6ホームつくられる。4月から大阪府下の6人のこどもたちが、入園する予定になっている。

 遙学園の村井徹学園長は「4年後には、枚方市が開所する児相に合わせて乳児院も開設する。ファミリーポートによる子育て家庭支援、クジラハウスによる施設養護、里親支援センターによる家庭養護の三つの機能を生かして、地域のこどもたちを支援したい。法人には、児童心理治療施設など心のケアについて専門性の高い部門もある。今後も、私たちの総合力を施設がない地域にも広げていきたい」と話している。

 大阪水上隣保館の基本理念は「援助を求める人いるならば、ためらわずに手をさしのべる」。1931年の創立以来、キリスト教の隣人愛の精神に基づき、どのようなこどもでも拒まず受け入れる姿勢を貫いてきた。

 現在は周辺3市を含めて合計13の関連施設を運営。基幹施設となる島本町の遙学園は定員134人の大規模施設で、措置されるこどもは府内全域から受け入れている。


 クジラ育英会 スナダ建設(株)(大阪市中央区)が建築技術の保全・発展と若手の育成、児童養護施設などへの寄付、教育助成を目的に2017年に設立した。

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