困窮者ら幅広くサポート 救護施設が地域の孤独受け止める
2022年12月13日 福祉新聞編集部社会福祉法人神戸光有会(小曽根佳生理事長)が運営する救護施設「アメニティホーム夢野」(神戸市)は、赤い羽根福祉基金を活用して、地域の困窮者をサポートする事業を行っている。退所者を含めた相談窓口を設置するとともに、調理などのイベントも実施。担当者らは事業を通して「つながりを求めるニーズが大きい」と話している。
自宅にも訪問
「家が雨漏りしていて」――。事業を立ち上げた初日の2020年10月、相談員の松﨑真也さんは、70代男性からこう打ち明けられた。
男性は実家で1人暮らし。職場の人間関係をきっかけに25年ほど前に仕事を辞め、貯蓄などで暮らしていたという。
その後、神戸市社会福祉協議会からの紹介で、アメニティホーム夢野が運営している中間的就労事業で働くことに。週に3回、清掃業務を行っていた。
松﨑さんは人間関係なども細かくヒアリング。実際に自宅にも出向くと手がつけられないほど庭が荒れていた。
また健康状態にも不安があったことなどから、生活保護が必要だと判断。市の福祉事務所に付き添って手続きなどをした。
松﨑さんは「男性は食費にかけるお金も少し増え、今は体調も良くなったようだ」と話す。
3年で15人支援
サポート事業の対象は、地域の困窮者や施設退所者など幅広く設定。対面や電話での相談窓口を設置したほか、行政手続きの対応もする。コロナ禍ということもあり、感染症に関する相談や給付金関連の問い合わせも多かったという。
また、月1回のペースで調理実習や健康教室、茶話会などのイベントを開催。
結果としてこの3年で15人を継続的に支援した。
もともと同施設は、退所して地域で暮らす人を受け入れる通所事業を実施していた。ただ、措置費の対象にならない人も少なくはなく、法人の持ち出しで支援していたという。
事業責任者の吉澤研二・副施設長は「社会福祉法人の役割を考えると、簡単に支援の必要な人を拒否することはできない。ただ、運営を考えると安定的な道はないか模索していた」と背景を説明する。
支援する意義
実際に3年にわたって活動した手応えも感じている。
利用者からは「緊急事態宣言中に1人で家にいるのは不安だった」「いつでも電話相談していいというのが、ありがたかった」など評価する声が上がったという。
主任支援員の東浩之さんは「つながりを求める声の多さを感じた。今後も試行錯誤したい」と語る。今年4月以降は独自財源で支援を継続している。
西橋隆三・副理事長は「地域の住民や民生委員、社会福祉法人などと連携を重ねながら活動を続けることが大切だ。福祉施設の意義をこれからも問い続けたい」と話している。
神戸光有会=1890年、実業家、小曽根喜一郎氏らが中心になって設立した「神戸報国義会」が前身。明治政府の富国強兵政策により港湾で働く出稼ぎ労働者が増える中、貧民救済事業を始めたのが始まり。現在は高齢、障害、子ども、母子分野など7施設を運営している。