障害者の作る「ご当地フォント」渋谷から全国へ ユニクロなど50社以上が採用
2023年01月17日 福祉新聞編集部障害者の描いた文字などをデータ化して、自治体や企業に活用してもらう「ご当地フォント」が広がっている。もともとは東京都渋谷区が障害者支援事業所などと共同で始めたものだが、全国5地域で展開。プロジェクトを担う一般社団法人シブヤフォントは「ネット上でデータを販売する仕組みを開放することで、全国でも展開できれば」と話す。
取り組みは、東京都の長谷部健・渋谷区長が「渋谷のお土産を何か作れないか」と発案したのがきっかけだ。
これを受け、区内にある8カ所の障害者支援事業所と桑沢デザイン研究所などが議論。その結果、障害者が作製した文字や柄のパターンをもとに、デザインを学ぶ学生がデータ化する「シブヤフォント」が生まれた。
シブヤフォントは現在500種類以上に上る。個人利用の場合、フォントは無料で、パターンは500円。企業の場合は有料で、ユニクロやキヤノン、ビームスといった有名企業50社以上が採用している。
実際、20年にオープンした渋谷のMIYASHITA PARKで渋谷サービス公社が運営するショップで、シブヤフォントを活用した服や雑貨などのグッズを販売している。フォントは渋谷区が公認しており、利益の一部は障害者に還元。産官学福の取り組みとして注目度も高い。
市役所の名刺でも
現在は、渋谷区内の障害者支援事業所や渋谷区などでつくる一般社団法人シブヤフォント(磯村歩共同代表)が運営。昨年12月上旬に開いたイベントで、これまでの取り組みを踏まえ、「ご当地フォント」として全国展開する考えを明らかにした。
第1弾として発表されたのは、東京都江戸川区、大分県別府市、広島市、富山県南砺市、滋賀県竜王町の5地域。それぞれ障害者支援事業所などが地元のデザイナーとタッグを組んで制作した。
江戸川区では、社会福祉法人ひらいルミナル(河野文美理事長)などが有志によるプロジェクトを立ち上げた。区内の障害者を対象に幅広く「江戸文様」のデザインを募集。ワークショップも開催するなど地域を巻き込んだ活動になっている。
イベントでは実際に制作に関わった障害者も登壇し「採用されてうれしい」などと喜びを語った。
このほか、竜王町にある社会福祉法人やまびこ福祉会の担当者が制作にあたってのコンセプトなどを説明。また、広島市のNPO法人コミュニティリーダーひゅーるぽんは、手掛けたフォントがすでに市役所の職員の名刺で活用されていることなどを発表した。
データをネット販売
今後、シブヤフォントはデータをネット販売する仕組みを提供。ご当地フォントを導入する際のアドバイスなども行う。
磯村共同代表は「これまで開拓してきた導入企業と全国の障害者事業所を橋渡しできれば。好事例を横展開し、全国に広げたい」と話している。