正しい座位の大切さ 生活の基本となる姿勢〈福祉新聞フォーラム予告〉

2022年0912 福祉新聞編集部
稲川利光氏

 新型コロナの感染拡大は、福祉サービスと医療の不可分の関係を浮き彫りにしました。福祉法人はこれまでは、単に福祉のサービスを提供してきましたが、今後はさらに医学の基礎知識を基にしたより専門的なサービスが求められています。福祉新聞フォーラムは小児専門医とリハビリ専門医の講演から、福祉に必要な医学的知識を取得しサービス提供に生かす機会とします。

講演 稲川利光氏

 講演の前半は、東京品川病院の下川和也・理学療法士が、利用者さんの持つ力を利用して行う介護の方法を提示します。寝て過ごされている人には起きていただき、座れる人には車いすや歩行器で移動していただく。リハビリで大切なのは、動作のすべてを介助するのではなく、その人の持っている力を活用しながら介護を繰り返し、本人の力が高まるようにすることです。ささいなことでも、自身でできることが増えることはとてもうれしいものです。

 

 後半は、生活の基本となる座る姿勢についてお話しします。苦痛なく、正しく座っていられることは、本人の生活を広げるための基本であり、リハビリを行う上での重要なポイントです。講演では、座位の大切さを嚥下と排せつを例にお話しします。正しい座位を促すことで嚥下や排せつが改善した患者さんの例を提示しながら、おいしいものをおいしく食べられるための関わりを考えます。

 

 自分でできることが増えて生活が膨らむこと、おいしいものがおいしく食べられること、それらは利用者さんの生きるモチベーションにつながる大切な要素です。利用者さんのもつ可能性を大切にしたいと思います。

 

 日々の関わりの中で利用者さんから「あなたに会えてよかった!」と言われることほどうれしいことはありません。そう言っていただく利用者さんに、そのままお返ししたい言葉でもあります。介護を通じて共に喜び合える、そんな関わりができればと思っています。

 

 いながわ・としみつ 令和健康科学大学リハビリテーション学部長、リハビリテーション科専門医・指導医、医学博士。NTT東日本関東病院リハビリテーション科部長、原宿リハビリテーション病院筆頭副院長などを歴任。脳卒中の急性期からがんの終末期まで、幅広いリハビリを実践。