ラジオで「リアル介護」発信 コミュニティ放送協会近畿地区で優秀賞

2022年0331 福祉新聞編集部
介護現場の今を発信する「ボス」の宮本さん(中央)、「ジョニー」こと畑中さん(左)、「トム」こと米島さん

 介護業界のイメージを「より明るく、おしゃれに」と放送されている、特別養護老人ホーム「青都荘」(大阪市都島区)のラジオ番組が話題だ。進行役は、施設長の宮本まやさんと2人の介護福祉士。「ぶっちゃけトーク」を繰り広げ、昨秋には近畿コミュニティ放送賞の「娯楽部門」で優秀賞を受賞した。16日の昼下がり、開始1年半の節目となる番組収録の現場を訪ねた。

 

 吉本興業の「なんばグランド花月」(大阪市中央区難波)のすぐそば。コミュニティエフエム、YES―fm(78・1MHz)のスタジオに、滋慶学園グループ(本部・大阪)の特養「青都荘」の宮本さんと、介護福祉士の畑中勇佑さん、米島浩祐さんがスタンバイ。26日放送予定の収録が始まった。

 

 放送は、毎週土曜日午後11時から30分(再放送は金曜日午後3時から)。介護現場の今を伝える、トークバラエティーだ。

 

 番組名は「Seitoso Grand;ma(青都荘グランマ)チャンネル」。福祉専門学校で教壇に立った経験もある宮本さんが、グランマ(おばあさん)ならぬ「ボス」。畑中さんが、ジョニー・デップならぬ「ジョニー・ジッポ」、米島さんがトム・クルーズならぬ「トム・クルーザー」。それぞれ「ボス」「ジョニー」「トム」というニックネームで出演している。

 

 名物コーナー「あるある介護」のこの日のテーマは、グループ施設の北海道の介護施設で起きたクラスター。宮本さんがスタッフ2人を連れて北海道に飛び、2週間、現場を仕切り、前日(15日)帰ってきたばかりのホットな話題だ。

 

 「フロアをゾーン分けして、職員配置や備品、指揮系統をはっきりして……感染は、ぴたりと止まった」とボス。

 

 「すごいですね」とジョニーとトム。

 

 「知らん人にしてみたら、いきなり飛び込んで仕切るのだから『だれやろ』となるよね。一緒に行った2人も(利用者さんの)ADL(移動、排せつ、食事などの日常生活動作)の最低ラインの情報だけで働いた。非常階段に雪が積もっている。雪国の当たり前が、私たちにとっては大きな壁やった」

 

 収録の合間に、宮本さんが言った。

 

 「ケンカもした。でも2週間、やり切った。これが青春です」

 

 番組のスタートは、2020年10月だった。

 

 「かっこいい理学療法士が来るとわかったら、おばあちゃんがお化粧を始めた。これだ、と思いました。介護現場にも、おしゃれや美しさ、明るさ、楽しさが必要。生活に張りが出る」

 

 熱意が実って、「青都荘のスポンサー番組」が実現した。

 

 番組では、宮本さんの体験なども話してきた。

 

 「初めての介護実習で、寝たきりのお年寄りの入浴介助をした。体を拭いてあげながら『気持ち良かったですか』と尋ねると、ピクリとも動かなかった男性が、満面の笑みを浮かべて『気持ち良かったわ~ありがとう』」

 

 仕事の目標を、手話通訳士から介護職に切り替えた瞬間のエピソードだ。

 

 受賞した優秀賞は、日本コミュニティ放送協会(JCBA)近畿地区協議会が主催する放送賞で「介護現場を愉快で楽しく伝えている話題性」が評価された。協議会には、近畿2府4県の30のコミュニティFM局が加盟している。

 

 宮本さんは話した。

 

 「夜勤中は1人でお仕事をすることになるので、そんなときに虐待が起きたりする。放送時間を夜中にしたのも、『ひとりじゃないねん』というメッセージを、福祉現場の仲間たちに伝えたいからです」

 

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