超党派議連で認知症法案まとまる 尊厳保持、施策推進が柱
2023年05月15日 福祉新聞編集部今後の認知症施策の旗印となる「共生社会の実現を推進するための認知症基本法案」の条文が5月9日、超党派の「共生社会の実現に向けた認知症施策推進議員連盟」(田村憲久会長代行)でまとまった。今国会で成立する可能性があり、成立すれば認知症に特化した初の法律となる。認知症の人の尊厳保持、施策推進を国と自治体の責務とし、認知症の人の意見を踏まえて共生社会の実現を図る。
法案の目的は、認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らせるよう施策を総合的、計画的に推進し、支え合いながら共生する活力ある社会の実現を推進すること。認知症の定義は介護保険法と同様に、アルツハイマー病などにより、生活に支障が出る程度まで認知機能が低下した状態とし、政令で定める。
基本理念には▽認知症の正しい理解の普及▽認知症の人の意見表明や社会参加の機会確保▽切れ目のない保健医療・福祉サービスの提供▽家族などへの支援▽認知症の予防、治療、リハビリなど医療的研究開発――などを盛り込んだ。9月21日を認知症の日、9月を認知症月間とする。
国には基本計画の策定を義務付け、現行の認知症施策推進大綱を改定して位置付ける。自治体の計画策定は努力義務とし、介護保険事業(支援)計画などの中に盛り込むことを想定する。
施行は公布後1年以内とし、5年後の検討規定も設ける。
議連は2021年6月に発足し、計13回の議論が行われ、予防が前面に出過ぎることを懸念する意見があったことから、予防は医療的研究開発の中の一つに位置付けた。また、認知症の人が地域で安心、安全に自立して暮らせる社会づくりの視点を充実させた。
認知症に関する法案は19年6月に自民、公明両党が法案を国会に提出してから約4年が経過した。議連でも意見してきた日本認知症本人ワーキンググループの藤田和子・代表理事は「認知症本人の意見をきめ細かく反映してもらった。早期に法律が成立することを期待している」としている。