介護保険制度改正について〈高齢者のリハビリ 98回〉
2024年07月05日 福祉新聞編集部介護保険制度および介護報酬の改定が2024年4月(医療系サービスは6月)に行われました。今回は6年ごとにある医療・介護・障害のトリプル改定となりました。
所属している一般社団法人全国介護事業者協議会の理事長を務めていることもあり、シルバーサービス振興会が事務局を担当している「民間介護事業推進委員会」の持ち回りで、この2年半ほど社会保障審議会介護保険部会に委員として参加することができました。さまざまな所属団体の委員の意見や質問を聞けたことは良い機会となりました。
報酬改定に先立ち、22年12月20日に「介護保険制度の見直しに関する意見」が介護保険部会で取りまとめられた。大項目は「地域包括ケアシステムの深化・推進」「介護現場の生産性向上の推進、制度の持続可能性の確保」です。
「地域包括ケアシステムの深化・推進」では、介護が必要となっても、できる限り住み慣れた地域で、これまでの日常生活に近い環境で暮らし続けたいという国民の願いを実現させるため、介護や介護予防、医療、住まい、生活支援、社会参加が包括的に確保される地域を構築して維持するということで「地域包括ケアシステム」をさらに深化・推進していかなければならないとされています。
その中で「生活を支える介護サービスなどの基盤整備」や「さまざまな生活上の困難を支え合う地域共生社会の実現」、さらにはそれを実現していくには「保険者機能の強化」が不可欠であり、給付の適正化や地域差の改善を行うため、介護給付適正化主要5事業((1)要介護認定の適正化(2)ケアプラン点検(3)住宅改修・福祉用具点検(4)縦覧点検・医療情報との突合(5)介護給付費通知)の推進が重要です。
「介護現場の生産性向上の推進、制度の持続可能性の確保」については、40~45年に介護サービスの需要がピークになると言われています。一方で、生産年齢人口の急速な減少も同時に見込まれていることから「待ったなし」で進める必要があります。
春闘などで他産業の給与アップが大々的に報道される中、介護職の処遇改善を公定価格で事業を行う介護事業者にとっては、介護報酬アップにより処遇改善を図ることが最善で最速の手法と考えられますが、他産業との差は広がっています。
また、施設や在宅の介護サービスにテクノロジーを導入・活用することは、働く者の生産性向上に直結しますが、経済的な支援や機器使用の伴走的な支援体制の構築が不可欠だと考えます。
最後に「給付と負担」について、第1号介護保険料は9段階から13段階に増え、負担割合の多い人が増えました。今回は行われなかったが、サービス利用の一部負担割合では、払える人には払ってもらう制度への転換が図られていくと予想されます。そのためには負担割合1割5分や2割5分など、細分化の検討が必要だと思います。
筆者=座小田孝安 株式会社シダー 代表取締役社長
監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長