財政審建議、構造転換を要望 介護の効率化求める

2025年1215 福祉新聞編集部

財政制度等審議会(十倉雅和会長)は2日、2026年度予算編成に向けた建議を片山さつき財務大臣に提出した。人口減少が本格的に進行する中で社会保障を維持するためには、給付と負担のバランスを確保する改革に、不断に取り組む必要があると指摘。介護分野については労働生産性が製造業と比べて低いと指摘し、効率化に向けた構造転換を求めた。また、今後介護職員の処遇改善はテクノロジーの活用などにより効率化した分を原資とする考えも示した。

建議は、日本経済がこれまでのデフレ・コストカット型経済から新たなステージに移行しつつある中、コストを客観的データに基づいて徹底的に精査する必要性を指摘。一方で、保険料負担の増加により、現役世代の可処分所得が低下することはあってはならないと警鐘を鳴らした。

また、介護分野については製造業と比べ、この30年で生産性が伸び悩むまま労働投入を増やしたことが給付費の増加につながったと分析。より少ない労働投入量で質の高いサービスを提供できる産業構造への転換が不可欠だと訴えた。

介護保険の利用者負担については、今後も高齢化による介護費用の増加が見込まれることから、さらに見直す必要があるとの考えを示した。具体的には、医療保険と同様に利用者負担を原則2割とすることや、3割負担とする判断基準を見直すことを挙げた。

同時に利用者負担のないケアマネジメントに、利用料負担を導入すべきだと指摘した。利用者が本来負担すべき費用を現役世代の保険料で肩代わりすることは不合理であるとしている。

一方で、介護職員の処遇改善は喫緊の課題だと強調。働き手が減る中で需要をカバーするには、介護テクノロジーの活用や経営の大規模化などを進め、効率化分を賃上げ原資とする考えを示した。今後の処遇改善に関する水準の議論では、こうした考え方を反映させるという。

このほか建議は、市町村が行っている介護保険事務の広域化や、保険外サービスの活用などについても盛り込んだ。

質確保、費用抑制の両立を 障害福祉などにも言及

財政制度等審議会がまとめた建議では、障害福祉分野や、こども分野などについても触れている。

障害福祉サービスの総費用額は、2015年に2兆円だったが、24年には4兆2000億円とこの10年で約2倍に増えた。原因について建議は、利用者負担の割合が医療や介護などと比べて少ないため、サービス料金や利用量増による負担を感じにくい構造にあると指摘。費用の伸びが大きいサービスでは、営利法人の参入が増えている点にも触れた。

そのため、建議はサービスの質の確保と総費用額の抑制を両立させる、制度改革に取り組むことが急務であると強調した。具体的には安易な事業参入を防ぐため、グループホームの管理者や生活支援員などについて、資格や実務経験、研修などの要件を定めるべきだと提案。サービス管理責任者については最低勤務時間を定めることも求めた。このほかグループホームの総量規制についても訴えた。

職員の処遇改善については喫緊の課題だと指摘。介護分野の動向を見つつ、事業者の経営形態やサービス内容に応じた効果的な対応を検討する必要があるとした。

同時に働く人が減る中で、サービスの質を維持するためには、生産性向上を通じた業務の効率化が不可欠だとしている。

保育に関しては、保育士の処遇改善に継続的に取り組んだ結果、賃金は着実に上昇しているものの、タイムリーに現場へ届いていないと指摘。今後全国でこども誰でも通園制度が始まり、人手不足が深刻化する可能性もあることから、機動的に公定価格を見直すべきだとしている。

少子化対策に関しては、保育所の待機児童が大きく減少するなど一定の効果が出ていると評価した。しかし施策の効果には時間がかかることから、23年に閣議決定したこども未来戦略に基づく加速化プランを着実に実行する必要があるとの認識を示した。

医療扶助を適正化

23年度に3兆6000億円に上った生活保護については、約5割を占める医療扶助の適正化を進めたい考えを示し、頻回受診や重複・多剤投与への対策を求めた。レセプト管理システムに、対象者の抽出要件を柔軟に設定できる機能や、処方に課題のある医療機関を抽出する機能などを標準的に備えるべきと訴えた。

また、医療扶助を受ける人の5割が、6種類以上の薬剤を処方されている現状も問題視。5~6種類以上を多剤併用の目安とする日本老年医学会のガイドラインを超えていると指摘した。

このほか、お薬手帳持参の義務化や、後発医薬品の使用促進、被保護者の国民健康保険加入なども提案した。

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