特別養護老人ホームにペット共生フロア〈青都荘・大阪〉

2025年1213 福祉新聞編集部
加柴さんとチワワの「りき」

社会福祉法人青野ケ原福祉会の特別養護老人ホーム青都荘(大阪市都島区)は、ペット共生型フロアを開設し、今夏、88歳の女性がペットのチワワと一緒に入所した。施設の空気はより優しく、柔らかに。チワワやトイ・プードルなどの小型犬を施設で飼って進めた、6年間の準備が実っている。「ペットは家族。最期の時まで一緒に暮らしたい」。特養は新たな対応を求められている。

ペットのチワワ「りき」君を連れて、青都荘5階のペット共生型フロアで暮らし始めたのは、88歳の加柴義惠さん。今年7月15日に入所した。

青都荘は定員90人。うち10人分がペット共生型フロア。床はクッションマットに張り替え、ペット犬の足の柔らかさに合わせて改修した。ケージも完備。食事、入浴、排せつ、運動、通院などは職員が行っている。

「りき」は5階フロアを自由に歩いたり走ったり。別の利用者も声を掛けたり、なでたりしてかわいがっている。加柴さんは、食事の時などに「りき」を抱っこ。夜は加柴さんの部屋に備えたケージで眠っている。

ALSの利用者との出会い

構想の芽生えは、20年前にさかのぼる。施設長の宮本まやさんが別の法人のデイサービスで働いていた27歳の時、難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)の利用者と出会った。

「自分が先に死ぬのは分かっている。犬をもらってくれませんか」

担当職員にこう頼んだ。職員は毎日の送迎で、家の中まで入る。ペットの柴犬が、利用者を見ると「わんわん」と飛びつく。まるで親子。車いすになり、入院することになった利用者に代わって、職員が柴犬を引き取った。

まやさんは「福祉の仕事だから、おうちの中のことまで分かる。ペットの看み取とりを託す人もいる。ペットを家族と思い、生きがいにしている高齢者が増えていると実感しました」。

小型犬で開設準備

その後、青都荘へ。コロナ禍前の2019年に、ペット共生型フロアの開設をにらんで、チワワの「おもち」を飼い始めた。4年後の23年10月9日、「おもち」は息を引き取った。この時、看取りチームのグループLINEには「訃報」が流れた。ペットを、利用者と同じ思いで見ている象徴的なLINEだった。

それから約20日後の10月31日、2代目セラピー犬として、トイ・プードル(メス)がやってきた。生まれたばかり。あずき色だったので「あずき」。警察犬の訓練士をしたことがある職員が、しつけをしっかり行った。

「安全義務があるので、小型犬から始めようと考えていました」とまやさん。「おもち」を飼い始めてから6年。24年春、環境、衛生管理、飼育上の問題をクリアして、大阪市に「ペット共生型フロア」の運営を届け出た。窓口の市職員は「前例がない。衛生面をしっかりお願いします」と話した。

ペットにかかる特別料金は、人件費や設備費、飼育などで月額合計8万1900円。看取りと葬儀は、別途3万円。

わが子のように思っている

「りき」が来て約5カ月。ペット共生型フロアのある5階を中心に、施設の空気が変わった。生活相談員の新枦修壱さんは、「犬物語をできる人は結構多い。私も犬を飼っています。ペットといると、幸せホルモンが出てきます」。

まやさんも、「認知症の人も、笑顔が多くなりました。口数の少ない職員も、『りき』や『あずき』を見ると、ニコニコです。私が苦労しているコミュニケーションを、ワンちゃんたちは見事にやってしまいます。特養の在り方も、時代に合わせて、しなやかに変わっていかなければと思っています」。

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