障害者支援施設で木工製品 龍谷大の学生も協力(南山城学園、京都)
2025年03月25日 福祉新聞編集部
参加しやすく、身体を動かし、外部とつながる――。〝一石三鳥〟の日中活動として京都府城陽市の社会福祉法人南山城学園(磯彰格理事長)の障害者支援施設「紡」で木工製品作りに取り組んでいる。地元の龍谷大(京都市)の学生が協力、障害者との交流を通し新たな気付きを得る〝学びの場〟にもなっているようだ。
紡には現在、定員いっぱいの37人が暮らしている。皆、療育手帳を持ち、半数以上が高齢期(平均年齢68・9歳)だ。散歩、カラオケ、ラジオ体操といった活動を日々組んでいるが、どうしても滞りがち。そこでキャンプ好きな職員が思いついた「まき割り」を2022年に始めた。
京都府内の木材会社から製品にならない端材(主にスギ、ヒノキなどの針葉樹)をもらい、園へ運ぶ。作るのはストーブやキャンプのたき火用のまき、スウェーデントーチ(小型の太めな丸太に切り込みなどを入れた簡易コンロ)、そしてファットウッド(木材の削りカスにろうを混ぜた着火剤)。生活支援員の増田百香さん(25)ら職員がコツを覚え、利用者と共に作業してきた。
高齢者にとってまき割りはそう簡単ではない。しかし、据え置き式のまき割り台を使えばハンマーを打ち下ろすだけで済む。そのせいか、37人のうち約20人が週1~2回参加、特に女性が多い。利用者が着火剤の袋をデザインし、トーチに絵を描いた製品を園のイベントや地域のマルシェ(市場)で展示・販売してきた。ただ、木材会社が遠いせいで、原材料の不足(仕入れ難)が悩みだったという。
24年度から支援を申し出たのが龍谷大(京都市)。瀬田キャンパス(大津市)の里山林「龍谷の森」に伸びる広葉樹(クヌギ、ナラ)の間伐材の提供を受けるほか、政策学部のゼミ生(3回生)5人が月1度園を訪れ、利用者と協働作業。製品を持続可能な社会づくりに向けた知識などを紹介する「龍谷大学サステナビリティDays」(深草キャンパス、昨年9月23日)に「障がい者福祉の向上と木材のアップサイクルの融合」をテーマに出展、利用者もブースに立った。
関わった学生は障害者について、「これほどいろんなことができるとは知らなかった」「持続可能な社会づくりに貢献できると思う」と驚きを隠さない。
増田さんは1日に開かれた法人内の研究発表大会で、この実践を報告。審査委員を務めた永田祐同志社大教授(日本地域福祉学会長)は「地域へ開いていく活動」と高く評価した。
紡の村地正浩施設長(50)は「活動中に利用者が楽しそうに歓声を上げ、学生に話し掛けている。施設の空気が活性化した。今後、まきストーブを使用している地域とか、銭湯などへ製品の販路をなんとか広げたい」と話している。
アップサイクル=廃棄されるものを再利用し、新しい価値を創造すること。
南山城学園=事業は障害者支援から出発。今年2月、創立60周年を迎えた。職員約800人。