高齢受刑者に福祉課程 6月から拘禁刑施行(法務省)

2025年0324 福祉新聞編集部

法務省は14日、懲役と禁錮に代わり6月1日から導入する「拘禁刑」の24の処遇課程を公表した。おおむね70歳以上で認知症や身体障害により自立困難な受刑者は「高齢福祉課程」を選ぶことができる。受刑者の特性に応じた処遇をすることで円滑な社会復帰や再犯防止を目指す。

現行制度では、犯罪傾向の度合いに応じた「単軸評定」で受刑者の収容先や集団編成を決めている。懲役刑の場合は刑務作業をすることが目的化し、処遇は画一的だ。

それに対し、「懲らしめ」から「改善更生」に軸足を移す拘禁刑は刑務作業を義務付けず、受刑者の年齢、資質、環境といった「多軸評定」で処遇する。例えば、高齢受刑者はリハビリに重きを置くことができる。

24の課程には、薬物依存の回復に重点を置く「依存症回復」、知的障害または発達障害のある人向けの「福祉的支援(DH)」、精神障害者向けの「福祉的支援(DM)」などがある。

拘禁刑は6月1日の施行後に罪を犯した人が対象となる。受刑者ごとの特性をアセスメントすることが重要になるため、法務省は処遇調査の充実を図る。刑務作業も目標を持ったものにし、受刑者の動機付けを高める。

犯罪白書によると、2023年に入所した受刑者1万4085人のうち、65歳以上は2009人。受刑者全体の14.3%を占め、その比率は20年間で約2倍に上昇した。

同様に、23年に入所した知的障害、統合失調症を含む「精神障害を有する受刑者」は2877人(20.4%)。高齢者、障害者は出所後に住まいや就労先を見つけるのが困難で、累犯に追い込まれがちなことがかねて問題視されていた。

そこで拘禁刑を創設する刑法改正案が22年6月に成立。1907年の刑法制定以来、初めて刑罰の種類を変更することになった。

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