措置支弁施設における収益構造の計画
2025年02月13日 福祉新聞編集部
定員規模、職員配置基準
昨今の児童養護施設は家庭的養育、小規模化、多機能化という指針を出されている。現状でそれと違う規模の施設がそこに向けて動き始めると、定員数や職員配置を見直していく必要がある。定員規模及び職員配置基準が事務費単価を通じて措置費収入に影響を与えることを第1回で解説した。そこで、右記の必要性から新たに児童養護施設の事業を計画するにあたり有益な指標を紹介する。
職員1人当たり指数
収益構造の計画を行う際に、措置費収入、人件費といった総額をみていては気付きは生まれづらい。(1)職員1人当たり事務費収入、事業費収入(2)職員1人当たり人件費といった職員1人当たり指標により、さまざまな定員規模のシミュレーションが可能である。
例えば、特定の定員規模を前提にして、職員配置基準を変えた場合の右記職員1人当たり指標を用いた措置費収入、人件費の試算が可能で、中長期事業計画の検討には有益である。これら、職員1人当たりの指標は生産性の指標と呼ばれている。
利用者1人当たり指数
また、特定の職員配置基準を前提に、定員規模を計画する際には、(1)利用者1人当たり事務費収入、事業費収入(2)利用者1人当たり人件費――といった利用者1人当たりの指標に置き換えると職員配置基準のシミュレーションが可能である。
例えば、特定の職員配置基準を前提に、定員規模を変えた場合の利用者1人当たり指標を用いた措置費収入、人件費の試算が可能である。これら、利用者1人当たりの指標は、利用者1人当たりにどれだけの経営資源が投下されているかという意味で福祉サービスの質の指標と言える。
事業継続の必要条件
職員1人当たり指標、利用者1人当たり指標から判断された定員規模、職員配置基準を検討した上で、さらに必要条件を満たすかの検証も必要である。すなわち、繰越金や施設整備積立金の必要な水準を確保できるかということである。第2回目では、児童養護施設、保護施設といった措置費支弁施設の施設整備にあたって、社会福祉法人の施設整備の負担は4分の1とされ、財源としては、施設整備時には施設整備積立金、償還時には民間施設給与等改善費加算額がそれぞれ対応可能な財源となっていることを紹介した。社会福祉施設の存在は福祉事業の必要条件であるから、複数年度にわたる運営のための繰越金や施設整備の積立金などは福祉事業の必要条件と言い換えることもできる。収益構造の再検討を行う際には、繰越金や施設整備積立金の十分性を検討の仕上げとして行う必要がある。
目指すべき目標値
定員規模及び職員配置基準の検討は、職員数を通じて措置費収入と人件費双方に影響するため、マネジメントすべきは措置費収入と人件費に尽きると言える。人件費をコストとのみ捉えてしまえば、抑えるという発想のみが働きがちなので、目指すべき目標値の一部という捉え方が必要だ。人件費と組織に残る利益の和を付加価値と位置付け、付加価値を利益に替わる組織の目標値と捉えることが必要だ。付加価値は新しい指標ではなく、労働分配率の分母として古くから利用されている指標である。
支払時期の管理
措置施設における運転資金管理で重要なことは、収入の回収期間に支払いの支払期間を合わせるといった工夫である。措置費収入の回収期間は措置費単価同様に社会福祉施設で決めることはできず、措置機関の決定による。措置費収入の回収期間は当月分の措置費は当月に入金するという措置機関が多いが、中には3カ月分を後払いという措置機関もある。措置費が後払いされる施設においては、支払時期が法定されている人件費や公共経費以外の支払いを措置費の回収期間に合わせるといった交渉が運転資金管理上は必要で、回収期間が支払期間よりも長ければ長いほど社会福祉施設が保有しなければならない運転資金は増え、資金繰りが窮屈となる。