措置施設の収入構造

2025年0126 福祉新聞編集部

1999年度までは高齢者施設、障害者支援施設、養護施設そして保育所といった社会福祉施設の事業対価は措置費であった。措置費収入の構造に従った支出マネジメントを行えば大きな黒字も赤字も生じない。2000年度以降は、事業対価がそれぞれ高齢者施設は介護保険収入、障害者支援施設は自立支援給付費収入など、保育所は委託費収入へと変遷した。措置費時代のマネジメントがそのまま継続しているとは思わないが、施設種類別に収支差が異なり、さらに同種施設でも収支差にばらつきがある。

施設経営者ではない筆者は収入構造に精通しているわけではないが、収入と支出を包括的に把握することは得手である。そこで、高齢者施設、障害者支援施設、養護施設そして保育所の収入構造を基礎から学び、その内容を平易にまとめ、読者と共有するというのが本シリーズの狙いである。政府や自治体の財源確保の視点ではなく、また報酬請求事務を担う微に入り細に入りの視点でもなく、施設経営の視点での収入構造の把握を前提とした支出マネジメントの考え方にも言及できればと考えている。第1回目に措置施設の収入構造を取り上げ、事業対価が措置費から変遷した順番に介護保険施設、障害者施設、そして保育所を取り上げていきたい。

社会福祉基礎構造改革の提言を受け、00年に社会福祉法が成立し、社会福祉は利用、選択契約を中心とする福祉サービスへ転換したが、児童養護施設や乳児院は措置制度が維持されることになり現在に至っている。本稿では、措置施設の収入構造の例として児童養護施設を取り上げる。

国庫負担金の交付基準

児童養護施設における措置費の国庫負担額、保護単価の設定方法、支弁額の算式はこども家庭庁通知「児童福祉法による児童入所施設措置費等国庫負担金について」によって示されている。それによれば、措置費の単価は①人件費と事務費からなる事務費の保護単価②生活諸費、教育諸費およびその他の諸費からなる事業費の保護単価の2種類に大別される。そして、措置費支弁額の基礎部分の算定は、事務費と事業費がそれぞれ次のように計算される。

事務費=施設の児童の定員数×事務費保護単価

事業費=施設の児童の現員数×事業費保護単価

措置費支弁額に影響する項目

(1)定員数、現員数

事務費支弁額、事業費支弁額は基本的に定員数、現員数に比例する。事業費の保護単価は配置基準などに影響されないため、事業費支弁額は現員数に比例する。一方、事務費の保護単価は定員規模、配置基準および職員の勤続年数により異なる。

(2)定員規模

事務費の保護単価は、定員規模ごとに設定されており、定員規模は①20人まで②20人から150人までは5人刻み③151人以上で設定されており、定員数が多くなると事務費保護単価は低くなる設定とされている。それゆえ、定員数の選択が事務費保護単価に影響を与える。

(3)配置基準

事務費保護単価は定員ごと、職員配置基準ごとに設定されており、どの配置を選択するかは施設の裁量に任されている。定員ごとに設定されている職員配置基準は①5・5対1②5対1③4・5対1④4対1である。②、③、④の配置は加算と位置付けられ、事務費の保護単価は段階的に高く設定されている。

(4)職員の勤続年数

事務費の基礎部分とは別途、民間施設等給与改善費が支弁される。これは、文字通り施設の定期昇給などの財源となる。職員1人当たりの平均勤続年数が8年から20年までの1年刻みで16%から28%まで加算が行われる。

児童養護施設の民間施設等給与改善費の加算が平均勤続年数20年で頭打ちとなっていることに留意が必要である。

(5)福祉サービスの質と生産性への影響

定員規模、配置基準および職員の勤続年数は事務費の保護単価を通じて、児童1人当たり事業収入といった福祉サービスの質および、職員1人当たり事業収入といった生産性の指標に影響を与えている、と言える。定員規模、配置基準といった施設の大枠の決定により、福祉サービスの質と生産性の大枠を決めているということに留意が必要である。