経営企画室を設置 施設の統廃合など課題抽出(旭川荘、岡山市)
2024年08月30日 福祉新聞編集部社会福祉法人旭川荘(岡山市、神﨑晋理事長)が今年度、70年近い法人の歴史で初めて「経営企画室」を設置した。コロナ禍や物価高騰など、外的要因に左右されにくい安定した経営基盤を構築するため、現状の課題分析と整理を行い、将来に対する提言をまとめるのが狙い。神﨑理事長に聞いた。
「2021年度から22年度にかけて、赤字決算となった。障害者の通所事業や短期入所事業などが、コロナ禍の影響で利用者が減るなどしたことが要因だ」と神﨑理事長。
23年度には、コロナの規制緩和で利用者数も回復するなど黒字に転換したが、神﨑理事長は「法人の永続的な存続のために、外的要因があっても安定した経営基盤を構築する必要がある。そのスタートとして、経営企画室を立ち上げた」と説明する。
経営企画室は、小幡篤志広報室長が室長を兼務し、ほかに3人の専任職員を配置。部署の設置は25年3月末までの1年間と期限を設け、課題ごとに提言をまとめる。
実際の課題の抽出、整理などは各事業部門の副施設長、課長らで構成するプロジェクトチームが行う。経営企画室はそれらの取りまとめ役として役割を担う。
法人の現状の課題について、神﨑理事長は「赤字部門の経営の考え方、人事考課、施設の建て替え計画、事務の効率化、これら4点が柱になるのではないか」との見解を示す。
旭川荘は、岡山市以外に真庭、高梁、瀬戸内市など幅広い地域に事業展開している。2代目の江草安彦理事長時代、障害分野の空白地域で自治体からの要望から進出地域が拡大していった経緯があるという。
「時代が変わり、民間や他の社福との競合で近年赤字化している施設もある。中山間地域の施設は、今が黒字でも人口減少で将来的には分からない。事業の取捨選択、統廃合を検討する必要がある」と神﨑理事長。
事業の統廃合だけでなく、新規事業の開拓や物品の施設間での共同購入の推進などで、可能な限り法人の現在の事業規模(約140億円)は維持していきたい考え。
神﨑理事長は「法人経営について、幹部(施設長以上)以外の意見を聞くきっかけにもなる。法人の将来を全職員で考えていきたい」と話した。
旭川荘は、1956年に前身となる財団法人旭川荘が設立され、57年に肢体不自由児施設「旭川療育園」、知的障害児施設「旭川学園」、乳児施設「旭川乳児院」を次々開設。以降、岡山市を中心に障害分野だけでなく高齢、保育など幅広い事業を展開している。