特養の空床をショートに 意識改革で高稼働率を実現

2022年1220 福祉新聞編集部
「空床が出ないよう心掛けている」と言う藤川福祉課係長

東京都練馬区にある社会福祉法人育秀会の特別養護老人ホーム「第3育秀苑」(個室ユニット60床、ショートステイ6床)は、入所の空床でも緊急受け入れも含めたショートステイに活用することで稼働率を向上させている。経営指標として入所とショートステイを合わせた稼働率を重視し、昨年度は目標の97%を超えた。

 

空床は主に利用者が入院している間、退所者の後に次の人が入所するまでの間に生じるが、収益確保のためには空床をなくし稼働率を上げることが重要だ。

 

同苑はまず病院別入院日数などを分析し、利用者の症状に合った病院を選ぶことで、全体の入院期間を短くすることができた。入院中も家族に状況をこまめに確認している。

 

ショートステイの受け入れについては迅速な対応を心掛け、介護者の入院などで困っている人のベッド確保に尽力している。また、緊急時の連絡体制を確保することで職員の安心感につなげている。大川惠美施設長は「迅速に受け入れることは福祉ニーズに応えることでもある。地域貢献にもつながる」と話す。

 

空床をなくすカギとなるのが生活相談員のベッドコントロールだ。同苑は居室によってベッドやトイレの配置が違い、共用スペースから離れていて常時見守りができない居室などがあるため、利用者のADL(日常生活動作)に合わせて居室を選ぶように調整している。

 

空床や利用者の状態が常に頭に入っているという藤川智子・福祉課係長と生活相談員は「急な入所でも現場が対応してくれる」と信頼を寄せる。

 

同苑では入所の空床を10人までショートステイに利用できる届け出もしてある。

 

これらの取り組みにより、2021年度の稼働率は特養94・7%、ショート専用・空床123・9%で合計97・3%となり、19年度より3ポイント上がった。特にショートステイの空床利用率は19年度の4・9%から21年度は58・4%に急増。緊急ショートステイの受け入れも5人から20人に増えた。

 

大川施設長は「空床の有効活用について職員に意識変革を促し、全員が協力してくれている」と言う。

 

区内には特養が37あり、入所待機者は逓減(9月末で約1000人)する中、今後も収益確保に向けた工夫を重ねていく。

 

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