死後事務を預託金で 終活の悩み、出前講座〈福岡市社協〉
2026年01月03日 福祉新聞編集部
福岡市社会福祉協議会が、頼れる身寄りのない高齢者からの預託金で死後事務を実施する独自事業を始めたのは2011年度。当時、終活支援に取り組む社協はまだまだ少数だった。「預託金が捻出できない」「終活について相談したい」などの課題やニーズに応じて事業を発展させてきた。こうした取り組みに全国の社協や行政から視察が後を絶たない。
市内では単身高齢者世帯が増加。市の大きな特徴として持ち家比率が全国的にも低く民間賃貸住宅の割合が高い。賃貸住まいで頼れる身寄りのない高齢者が、保証人がいないことなどを理由に住み替えできないケースがあり、03年度に市の補助事業として住み替え支援に着手。家財処分など死後事務をオプションとして用意したところ、死後事務に高いニーズがあることが分かった。
頼れる身寄りのない高齢者の死後の不安を解消するため、11年度「ずーっとあんしん安らか事業」と銘打った独自の死後事務事業を開始した。預託金(50万円~)で契約者の希望に沿った葬儀や納骨、家財処分、行政手続きを行う仕組みだ。
市内に住む70歳以上で原則こどもがいない人が対象だが、こどもに障害があったり、音信不通だったりする場合も対象となる。24年度時点の契約者は81人。入会金1万5000円、年会費1万円、預託金は70~80万円が多い。入退院支援は別途オプション料金を支払えば利用できる。
一方、預託金を準備できない人もいたため、17年度に「やすらかパック事業」を新設。契約者は53人(24年度)。市内在住の40~90歳未満で死後事務を頼める親族がいないことなどが要件。少額短期保険を利用し、毎月定額の利用料金(3000~8500円)の支払いのみで、市社協が委託したNPO法人が直葬、納骨、家財処分などを行う。
19年度にサポセン
さらに、早い段階から終活の準備を総合的にサポートできればと、19年度には「終活サポートセンター」(吉田時成所長)を立ち上げた。死後事務委任に加え、窓口で終活に関する悩み相談に応じるほか、出前講座など啓発活動にも当たる。
職員体制は正職員2人、嘱託職員3人、短時間勤務職員2人の計7人。終活支援に掛かる年間経費の総額はおよそ3000万円。市からの補助があり、残りは利用料のほか、遺贈や寄付金などの自主財源で捻出している。
高齢者等終身サポート事業を提供する民間事業者が増える中、吉田所長は社協が死後事務に取り組む強みについて「住民との距離が近く、安心して相談してもらえる。営利目的ではないので公平な情報提供が可能だ。契約者の判断能力が低下しても市社協が法人後見となったり、日常生活自立支援事業を利用してもらったり、実際併用している契約者もいる」。
一方、制度のはざまにあって支援の対象外となる人もいる。「こうした人や手厚い入退院支援、保証人を求める人には国のガイドラインを順守する民間事業者を紹介することもある。一概に民間事業者だから悪いとは思わない。補い合うパートナーだ」と話す。
国では社協などが取り組む、頼れる身寄りのない高齢者を支える新事業の検討が進む。「既に実施している立場としては予算面などで期待が大きい。死後事務の所管を明確化してもらい、死後事務の履行状況をチェックする仕組みもあると助かる」と話す。

