対話重視で包摂社会へ 寿歴史研究会が集会〈横浜〉

2025年1211 福祉新聞編集部
会場の参加者からも意見が挙がった

簡易宿泊所の並ぶ街として知られる横浜市寿地区を参考に、誰も排除しない包摂社会を他の自治体でも構築しようと、寿歴史研究会(代表=加藤彰彦沖縄大名誉教授)が11月24日、横浜市内でシンポジウムを開いた。

主催者は5200人超が簡易宿泊所で暮らし、その9割が生活保護受給者の寿地区を貧困も包み込んだ「福祉のまち」だと認識。その姿から包摂社会をつくる糸口を探ろうと、有識者や首長らによる意見交換を企画した。

キーワードは「対話」と「市民協働」だ。井手英策慶應義塾大教授(財政学)は、生活保護を担当する神奈川県小田原市職員が「保護なめんなジャンパー」を着た問題の再発防止検討会(2017年)の座長としての経験を披露した。

「当初は反発していた職員とも徹底的に話し合い、言いたいことを言った」と回想。誰かを敵に見立てて攻撃するだけでは社会問題は解決しないとし、対話の重要性を説いた。

「若いころ、寿地区で日雇い労働を経験したこともある」と明かしたのは保坂展人世田谷区長だ。区長になってからは車座集会を開き計500人の住民から意見を聞いたことなどを紹介した。

地域主権に関する著書のある岸本聡子杉並区長は、横浜市に市民協働条例がある点を評価。寿地区で住民懇談会の代表を務めてきた大友勝さん(社会福祉法人恵友会顧問)は、居場所や出番の保障が肝要だと説いた。

同研究会は横浜市の元職員や地方自治の研究者らによる任意団体で、23年に寿地区の歴史をまとめた「横浜寿町~地域活動の社会史」(上・下巻、社会評論社)を発刊した。

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