こども誰でも通園制度に疑問〈コラム一草一味〉

2026年0530 福祉新聞編集部

淑徳大学 教授 結城康博

 2026年4月から、就労要件を問わずに月一定時間まで保育所などを利用できる「こども誰でも通園制度」が全国的にスタートした。この事業の詳細は省略するが、多くの課題を抱える事業であろう。その一つが保育士不足であることは言うまでもない。

 こども家庭庁の資料によると、26年1月実績で保育士の有効求人倍率は3・88倍と、全職種平均の1・27倍と比べると、かなり厳しい状況にある。

 このような現状において新事業に取り組んでも、果たして保育の質を確保できるのか。

 23年度の保育士登録者数は約185万人であるが、従事者数は約69万人にとどまっている。福祉施設で勤務していない115万人ほどの潜在保育士の中には、賃金を理由に他産業で勤務している者も多いと考えられる。

 確かに、政府も25年度補正予算で保育士、幼稚園教諭らの公定価格上の人件費を5・3%増とし、さらに26年度も継続する予算措置を講じている。24年度の保育士の平均賃金に公定価格引き上げを加味すると約35万円になる。しかし、全産業平均の約38万6000円には届かない。

 まずは保育士の賃金を全産業水準に財政措置しないことには、保育士不足の改善の兆しすら見いだせない。

 こども誰でも通園制度の意義は理解できるが、肝心な保育士不足が解消しない限り、理想論で終始してしまうのではないだろうか。

 私は、1法人1施設の某小規模保育所で非常勤理事長として保育経営に携わっているが、新事業は保育士の確保、定着の視点から見送る判断をした。たとえ非常勤保育士などを雇用して新事業に着手しても、既存の本来業務に従事している職員らに負担をかけてしまうからだ。

 また、一時保育事業よりも、こども誰でも通園制度の方が多様な利用者層が増え、保護者対応などにも課題が生じると経営判断した。

 新事業をスタートすることは理解はできるが、まずは保育士の賃金を全産業並みに引き上げていくことが急がれる。

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