〈論説〉介護保険の見直し 過疎地をどう支える

2026年0523 福祉新聞編集部

 2040年へ、この列島の変貌は激しい。

 高齢化はなお進展し、85歳以上が急増する。介護や医療の従事者はより多く必要になるが、働き手は急減する。とりわけ全市町村の3割、558市町村は人口が半数未満に落ち込む。

 今国会に提出の「社会福祉法等の一部改正案」は複数の「束ね法案」だが、主力は介護保険制度の見直しだ。特に過疎地域の介護態勢に新たな方針を示した。

 全国を「大都市部」「一般市等」、さらに担い手不足と利用者減に挟撃される「中山間・人口減少地域」と3区分した。国土の6割を占める中山間地の中で「特定地域」を設ける。そこでは介護職らの人員配置基準の緩和などに踏み切り、月単位の定額報酬も可能な「特定地域サービス」を創設する。

 「特定地域」は、厚生労働省令で基準を定め、都道府県が介護保険事業計画等の策定課程で市町村の意向を確認しながら決める。

 現在も利用者の少なさや交通の不便さを勘案し、離島などで基準以下の人員配置を認める「特例介護サービス」がある(訪問介護、通所介護、福祉系ショートステイなど)。この対象地域・業種を拡大する形になる。

 人材確保が難しい先行きを考えると、配置基準の緩和はやむを得ないのか。だが、審議会の議論でも「サービスの質は落ちる」「スタッフ減で仕事はきつくなり、就労希望者まで減らないか」「何より介護職全般の待遇改善を」などと疑義や注文が目立った。

 特定地域の訪問介護には、提供回数に応じた出来高払いと、月単位の定額払いのどちらかを事業所が選べるようにする。過疎地では利用者の減少、散在する利用者宅を回る負担などで経営難に陥る。強硬な反対意見はなかったが、利用者側に選択権はなく、自己負担は増えそうだ。

 新たな取り組みを進めても、事業所を整備できない地域では、市町村が介護事業者に委託する「特定地域居宅サービス等事業」の創設を提案した。介護保険の財源を使い要支援者らにサービスを提供する地域支援事業の拡大版で、広範囲な訪問系サービスの展開や訪問介護と通所介護の兼業も想定される。

 介護サービスを維持する、いわば〝最後のとりで〟になるが、委託事業所探しや委託事業所づくりは「役場の職員さえ補えない中で、人材確保面で難しい」と現場から本音も漏れた。

 確かに列島の変貌をにらみ、危機感を深めるべき節目にある。一方で、法改正のたびに複雑多岐になる制度に戸惑う。介護サービスを利用しない20~64歳の62%が介護保険を「ほとんど知らない」「まったく知らない」と答えた(長寿社会開発センター調査)。

 危機感の共有を広めなければ危機は乗り切れない。


みやたけ・ごう 毎日新聞論説副委員長から埼玉県立大、目白大大学院の教授などを経て現職

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