〈論説〉成年後見の抜本改革 地域福祉と共に歩む
2026年04月25日 福祉新聞編集部
介護保険と成年後見制度は2000年度に始まった。
行政が介護サービスの提供を決める措置制度から利用者が「選べる福祉」へ、認知症の人や障害者を無能力扱いの禁治産者制度から「自己決定権の尊重」へ、いずれも大転換だった。
その成年後見制度(民法)の抜本改正案が今国会で成立する見込みである。法務省の法制審議会・成年後見部会は24年4月から33回も議論を重ねてきた。
議事録は、当事者団体の代表、弁護士、司法書士、判事、研究者らの報告・討議で山盛りになった。
「認知症の高齢者が推計700万人を超える中、成年後見の利用者は約25万人にとどまる」「申し立てに手間・時間・費用がかかる」
現行制度は、判断能力の程度で3類型に分かれる。「後見」(能力を欠く常況)「保佐」(著しく不十分)「補助」(不十分)。
しかし、「後見人の妹が1万円のマフラーを買ってやったら家庭裁判所から〝ぜいたくだ〟と怒られ」「虐待の救済には非常に有効だが、安定した生活に戻っても、長いと20年も後見を続ける」「遺産分割や不動産売却の完了後は、親族後見人や市民後見人の〝寄り添い型支援〟が本人のニーズに合うのだが」(要旨)~
生活のすべてを管理されがち。本人の意思が尊重されにくい。利用を始めるとやめられない。そんな問題や課題が洗い出された。
議論百出の末、主柱ともいうべき「後見」を原則にしない新制度へ切り替えられる。3類型を「補助」に一本化し、本人の意思や判断能力に応じ「補助人」の支援内容を個別に決めていく。いわばオーダーメード型への思い切った改革だ。
補助人の同意が必要なのは、預貯金の扱い、借金や保証、高額な施設入所、不動産取引、相続手続きなどと想定される。「同意」を得ずに行った場合は補助人が「取消権」を使える。
同意の意思表示も難しい場合は「特定補助人」を設け、重要な財産取り扱いやそれに準ずる行為に代理権や取消権を与える。
制度利用が不要と家裁が認めると途中終了、あるいは同意権や代理権の一部を取り消す。補助人についても財産管理や身上保護が不十分な場合などは解任の検討対象になりそうだ。
難問は、制度の利用終了後の暮らしや、制度対象外の営みをいかに支えるか。
例えば、生活に欠かせない預貯金払い戻し、各種の手続き、介護サービス利用などを関係者が協力して手伝えるか。市民後見人を筆頭に公私の福祉サービスを地域ごとに整えることが一層重要になる。
介護保険は、介護・福祉・医療の連携を図る「地域包括ケアシステム」を大目標に掲げる。つまり「地域ぐるみの支え合い」だ。新たな成年後見制度も、そんな枠組みの中で育てることになる。
みやたけ・ごう 毎日新聞論説副委員長から埼玉県立大、目白大大学院の教授などを経て現職

