原点回帰としてのマクロ福祉〈コラム一草一味〉

2026年0411 福祉新聞編集部

社会福祉法人佛子園 理事長 雄谷良成

 一人の生活を支えることは、福祉の最も大切な営みの一つである。食事に寄り添い、入浴を支え、日々のリズムを整え、困り事に耳を傾ける。これがいわゆる〝ミクロの福祉〟であり、制度として整えられてきた福祉サービスの中心にある領域だ。

 しかし、地域を見渡すと、また別の種類の困難が広がっている。バスの路線が廃止され、買い物に行けない高齢者が増える。商店街のシャッターが下がり、日用品すら手に入りにくくなる。農家は担い手を失い、耕作放棄地が広がる。さらに災害が起きれば、地域の基盤そのものが揺らいでしまう。

 こうした出来事は制度の事業コードには書かれていないが、確かに地域の暮らしを脅かす〝社会課題〟である。こうした広いスケールの課題に向き合う営みを〝マクロの福祉〟と呼ぶことができる。

 戦後間もない1951年、社会福祉事業法が成立した頃の社会福祉法人は、まさにこのマクロの福祉を担う存在だった。まだ制度が整っていなかった時代、社会福祉法人は地域の困難そのものを引き受け、制度はその後から追いついてきた。言い換えれば、本来の社会福祉法人とは、地域で生まれる課題を事業として扱う〝地域の社会課題産業〟だったのである。

 ところが制度が整うにつれ、福祉は次第にミクロの領域へと収まり、社会福祉法人は「制度に定められたサービス」を提供する組織へと姿を変えていった。

 制度に従うことは安定をもたらすが、地域の未来を支える力には必ずしもつながらない。制度の内側だけで福祉を完結させようとすると、制度の外側に生まれる地域の息づかいや、暮らしの違和感が見えなくなってしまう。

 人口減少や災害による被害が深刻化し地域の基盤が揺らぐ今こそ、社会福祉法人は創設期の精神に立ち返る必要があるのではないか。

 制度の中で福祉を語る時代から、制度の外側で地域を支える福祉へ。創設期の社会福祉法人が持っていた視野が今再び求められている。

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