女性自立支援施設で通所事業の試行開始

2026年0120 福祉新聞編集部
さつき寮サテライトの「こもれび」で打ち合わせをする職員

2024年4月施行の、困難な問題を抱える女性支援法(以下、新法)に基づく女性自立支援施設で今年度、自宅などから通う女性を受け入れる厚生労働省のモデル事業が動き始めた。「保護更生」を掲げた売春防止法の婦人保護事業を改め、女性の福祉向上をうたったのが新法だ。その理念の具体化に踏み出した3施設を訪ねた。

救世軍新生寮 施設機能を還元

「自分にもできることがあると分かってうれしい」。都内に住む30代の女性Aさんは25年7月から救世軍新生寮(東京)に週1回通い、2時間ほど刺しゅうに取り組んでいる。

大学卒業後、「自分は発達障害かも」という思いを抱き、自宅にこもっていたというAさん。今は仕上げた刺し子でお金をもらう喜びを味わい、「ここに来れば職員が丁寧に教えてくれる」と話す。

モデル事業は「施設の機能を地域に還元すること」(施設長の熊田栄一さん)が狙い。入所に至らない人でも心理的なケアを受け、生活力を身につける場を必要とする人はたくさんいるという見立てだ。

女性自立支援施設は1956年制定の売春防止法に基づく婦人保護施設として歩んできたが、新法によって名称が変わった。

第1種社会福祉事業で、入所の可否は都道府県設置の女性相談支援センター(旧婦人相談所)が判断する措置施設だ。困り事を抱えた人が入るには心理的にもハードルが高く、全国47施設の定員充足率は2割程度と低調だ。

心身のケアを必要とする女性といかにつながるかが長年の課題で、各施設は工夫を重ねている。

自立支援ホームいこい「ふらりと居間に」

モデル事業参加施設の一つ、自立ホームいこい(東京)は同じ敷地内の会議室などを活用した居場所を「ふらりま」と命名。居間にふらりと立ち寄るように、という造語だ。

月に2回開く「ふらりま」に通う女性はひとり親だったり、精神疾患を経験したりとさまざま。話し相手になる職員は「人との関わりがうまくいかないけれど、社会とは関わりたいというニーズが、女性は男性よりも大きい」とみている。

さつき寮は職員採用サテライトを開設

モデル事業を機に職員を6人採用したのは神奈川県立のさつき寮(横浜市)だ。指定管理者として運営する社会福祉法人神奈川県民生福祉協会は、通いの場となる「こもれび」を週3回開くための部屋も藤沢市内に借り上げた。

施設職員が兼務した試行というよりも、継続性を念頭に置いた新規事業と言える。職員はアート活動やランチ会などを用意し「小さな成功体験を積み重ね、自己決定できるようになってほしい」と意気込んでいる。

若年女性の自殺増 救急搬送8年で3倍

婦人保護から女性福祉へと法制度が転換できたのは、女性の生きづらさがコロナ禍を機に可視化されたからだ。

例えば、20歳未満の女性の自殺は20年以降増え続け、24年は女性(430人)が男性(370人)を初めて上回った。過量服薬などを理由に救急搬送された20歳未満の女性は、16年からの8年間で3倍に増えた。

こうした事態を重くみて、支援につながりやすくしようというのが通所モデル事業だが、実施は3カ所と少ない。

新法には施行3年後の見直し規定があり、通所事業の拡大は論点になり得る。

新法制定に有識者として関わった堀千鶴子城西国際大教授(女性福祉)は「全国どこにいても必要な支援を受けられるよう、自治体および関係機関は女性支援事業の体制整備を急ぐ必要がある」としている。

 

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