学生が補助具製作 市内福祉法人へ寄贈(佐賀県立嬉野高校)
2025年03月05日 福祉新聞編集部
少しでも日々の動きが楽になってくれたらと、佐賀県嬉野市にある県立嬉野高(原美和校長)の3年生がICT(情報通信技術)を活用し、車いすブレーキの延長レバーなど補助具を製作。同校とコラボ企画を展開する市内の社会福祉法人済昭園(小佐々良徹理事長)へ先月、寄贈した。
嬉野高は福祉と商業、工業(機械、電気、建築の3科)が学べる。DXハイスクールとして、ICTを活用した文系、理系を横断する探究的な学びを展開しており、今回の器具作りが初の実践となった。
製作したのは福祉科の中野晃汰さんと山口夕梨恵さん、それに機械科の福田陽生さん、廣賢治さん、峰川正龍さんの5人チーム。全員3年生(18歳)で、この春卒業する。
企画のきっかけは▽お年寄りが食堂のテーブルや洗面台、トイレの手すりに杖つえを立て掛けようとして床に倒してしまう▽車いすのブレーキレバーが短く、ラップの芯で継ぎ足したり、まひ側にブレーキがあると健側からの手が届きにくい――といった「困った様子に、介護実習の時、しばしば気がついた」(山口さん)からだ。しかも、「みなさん、ニーズが違う」(中野さん)。床に落ちた杖を拾おうとすれば、転倒の危険もある。
園で福祉科の2人がヒアリングした後、工業科と相談し、昨秋、作業に取り掛かった。
ブレーキレバーの直径を勘案しながら専用ソフトで設計図を描き、3Dプリンターで造形。それぞれ10個ほど試作した(素材はいずれも樹脂)。レバーのグリップに角度をつけたり、滑りやすい丸い手すりやテーブルの端でも安定するよう杖掛けの設置面に滑り止めゴムを張ったりと、既製品にはあまり見かけない工夫も施した。
生徒たちは先月19日に特別養護老人ホーム済昭園を訪れ、杖掛け13個、延長レバー3組を贈り、車いすに備え付けた。カラフルなレバーに利用者からは「色が付いていて分かりやすい」と好評だった。
製作にあたった3人は「大きさや形などを工夫しながら試行を繰り返し、より良い製品になった」と声をそろえる。また「人の役に立つものを作ることで、物作りの喜びを味わうことができ、本当に良かった」(機械科の吉武吉隆先生)、「一人ひとりにあったケア、QOL(生活の質)とは何かを考えるいい機会」(福祉科の浦郷久美子先生)と話す。
特養ホームの馬場昇施設長は「想像していたより、がっちりできていて便利。活用します」と感謝している。