「保育士の腰痛防げ」独自の体操で職業病改善(愛耕福祉会、島根)
2024年09月17日 福祉新聞編集部保育士の職業病である「腰痛」の改善につなげようと、島根県雲南市で3保育所(市立2、民設民営1)を運営する社会福祉法人愛耕福祉会(白根康久理事長)では、全職員約80人が独自の腰痛体操に取り組んでいる。道具を使わず、5分程度で完結するシンプルな体操で、10年以上手放せなかったコルセットが外せるようになった保育士もいるなど顕著な効果を上げている。
同会は、職員の健康管理を経営課題として捉えて積極的な改善を図る「健康経営」に力を入れており、腰痛予防もその一環だ。白根理事長は「職員が生き生きと働き、専門性の高い保育を継続して提供することが法人のミッション。職員が体調不良であれば、地域のセーフティーネットとして市民の期待に応えられなくなる」と力を込める。
腰痛は介護職の悩みの代名詞だが、中腰から前かがみの姿勢を長時間繰り返したり、こどもを抱っこしたりする保育士も腰痛持ちが多い。同会で働く保育士のおよそ6割が腰痛に悩まされている状況があり、腰痛改善につながればと3年前に独自の体操を始めた。
理学療法士や作業療法士でつくる株式会社Canvas(松江市)に保育士の健康状態を分析してもらった上で共同開発した「Aiko体操」を、勤務終了5分前に全職員が実践している。背筋を伸ばしたり、腰を反らせたりするなど体をケアしてから帰宅することが習慣となっており、「明日に疲れを残さない」という意識が職員に浸透している。
体操導入後、多くの職員が腰痛改善を実感しており、膝の痛みがなくなるなど腰以外の部位の不調にも効果を感じている職員も少なくない。
白根理事長は「現役世代の減少に伴い保育士の確保が今後一層困難になることが見込まれ、健康を保ちながら長く働いてもらうことが重要だ。健康経営を強化していきたい」と話す。
健康経営の効果は職員だけにとどまらず、健康経営に臨む法人の姿勢が決め手となり、今年度新卒採用で保育士3人が入職するなど人材確保にもつながったほか、園児の保護者からは「職員を大切にする保育所なので安心して預けられる」といった声も寄せられたという。