ハラスメント防止〈高齢者のリハビリ 99回〉
2024年07月12日 福祉新聞編集部2020年6月1日から、職場におけるハラスメント防止策が強化されました。これは労働施策総合推進法や、女性活躍推進法などハラスメントに関係する各法律が改正・施行されたことによります。22年4月1日からは、すべての事業者に義務付けられました。特にパワーハラスメントや、セクシャルハラスメント、マタニティーハラスメントなどが対象で、「(1)優越的な関係を背景とした言動・行為(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより(3)労働者の就業環境が害されるもの」とされ、(1)~(3)のすべてを満たす場合はハラスメントと規定されています。
多くの例がありますが、パワハラには身体的・精神的な攻撃や、人間関係の切り離し、過大な要求などがあります。セクハラには労働者の意に反する性的な言動・行動があります。昨今では大企業の役員も辞任や解任の対象となり、世間を騒がせています。
さらには、事業者自ら不正やハラスメントを是正しやすくするとともに、安心して通報しやすくするために、公益通報者保護法が22年6月1日に改正されました。通報窓口の設定や調査、是正措置などを義務付けるとともに、通報者の保護および守秘義務(刑事罰あり)が設定されました。一般企業だけでなく、医療機関や介護事業者にも義務付けられています。
もう一つ、医療や介護の現場で取り上げられているのが、カスタマーハラスメントです。中には顧客からのクレーム・言動・要求が妥当でないものや、要求を通すやり方が社会通念上適切でないものなどがあり、就業環境が害され、業務に支障が出ることがあります。
我々が働く現場では長年、患者や利用者から受けるパワハラやセクハラを見て見ぬふりや、存在しないかのような扱いをしてきたと言われています。(1)「ハラスメントをうまくかわせてこそプロ」という意識があった(2)職員の側にも落ち度があると考えていた(3)職員個人で解決すべき問題だと考えていた(4)ハラスメント行為者の言動・行為は改善できないと考えていた――などの理由で見過ごされてきました。
しかし、人権意識の向上や「ハラスメントは許さない」という社会的認識の熟成・共有化が社会全体に広がりを見せてきたのも事実です。いかなる理由、いかなる場所においても、暴言や暴力などのパワハラ、セクハラは許されないという風潮が高まり、現場で起きているハラスメントは事業者側の指導・教育や、その一つひとつに対処することも個人ではなく、契約主体である事業者に求められることを認識しないといけません。
厚生労働省の資料を見ると、ハラスメントを受けて仕事を辞めたいと思った職員の割合が3割前後という実態もあります。今後は、職員を守ることができない事業者は職員から見放されることも考えられます。働きやすい職場、働きたい職場にすることが我々に求められています。
筆者=座小田孝安 株式会社シダー 代表取締役社長
監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長