元気の源は「欲求」 生活を広げるきっかけに 〈高齢者のリハビリ 97回〉

2024年0628 福祉新聞編集部

通所リハビリテーションに対する世間の認識は「介護保険での通いのリハビリ」「集団体操とかをする」といったところではないでしょうか。通所リハの基本方針は、居宅条例で次のように示されています。

「利用者が要介護状態となった場合、可能な限り居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう生活機能の維持または向上を目指し、理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーションを行うことにより、利用者の心身の機能の維持回復を図るものでなければならない」

以上のことから通所リハの目的は「生活機能の維持向上」「心身機能の維持回復」であると理解できます。

2024年度介護報酬改定では、退院後早期のリハビリ実施に向けた退院時情報連携の推進がうたわれています。入院中にリハビリを受けていた利用者に対し、通所リハビリ計画を作成するに当たっては、入院中に医療機関が作成したリハビリ実施計画書を入手し、内容を把握することが義務付けられることになりました。また、事業所の理学療法士らが医療機関の退院前カンファレンスに参加し、共同指導を行ったことを評価する新たな加算が設けられます。リハビリの質も求められ、利用開始から12カ月が経過した後の減算は拡大されます。

以上の内容を踏まえると、通所リハの方向性は「医療(病院)、ケアマネジャー、地域包括支援センターとの連携強化」「より質の高い生活機能訓練・心身機能訓練」にあると解釈できます。

しかし、通所リハがレスパイト(小休憩・休息)ケア目的で利用されることは珍しくありません。「一時的に介護から離れる時間」が介護者にとって重要であることは紛れもない事実で、通所リハの大切な役割の一つです。

通所リハにおける生活機能訓練は常に前向きで、利用者の有する能力における「安全に」「継続できる」「活動性が最大限に高まる」日常生活動作の獲得を目指すべきだと考えています。通所リハでは自宅訪問の機会もあるので、うまくすると「継続的に介護から離れる時間」を創出できることも多く、それは「質の高い生活機能訓練」と呼べます。

人間の元気の源は「欲求」だと思います。おいしいものが食べたい、きれいな景色を見たい、好きな人と話がしたい――など自己実現や承認欲求、それぞれ多様な価値観があります。

その価値観に触れた時、何を目標にするか、スタッフがどんな形で力になれるのかが見えてきます。欲求にちなんだ目標が達成された時こそ、生活が充実し、心身が元気になれます。通所リハは単なる機能訓練の場所ではなく、生活が広がるきっかけになる場所でありたいと考えています。

 

感謝状

 

通所リハで関わった人が書いてくれた感謝状を紹介します=写真。非常に達筆で、受け取ったとき、驚きました。急性期・回復期リハビリ病院入院中から懸命にリハビリし、通所リハを経て「したいこと=書道の先生をすること」が達成できました。そういった瞬間に立ち会える通所リハは本当に魅力的な職場です。

筆者=山田和典 八千代リハビリテーション病院 リハビリ科 係長 理学療法士

監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長