共生社会は自己選択と自己決定が基本〈高齢者のリハビリ 93回〉

2024年0531 福祉新聞編集部

共生社会

共生社会は年齢、性別、障害などの違いを互いに認め合い、ともに生きる社会です。介護が必要になっても、どこで(在宅、施設など)、どのようなサービスを利用するかは他者に強要されることではありません。基本は利用者の自己選択、自己決定です。

地域共生社会とは、制度、分野ごとの「縦割り」や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えてつながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会を指しています(厚生労働省)。

介護保険の利用者は1人暮らしがトップです。次が夫婦世帯、3番目が三世代同居です。家族が望むことと、本人が望む暮らしは同一ではありません。年齢も世代も生き方も異なります。「食事や排せつなど世話になっているから」と自分の希望しない生き方をすることは本人らしい生き方とは言えません。厚労省は「地域住民や地域の多様な主体が参画」することで「暮らしと生きがい、地域をともに創っていく」と言います。誰もが役割を持ち、地域に参画し地域社会を創ることは社会に役立つと思います。

しかし、そこにもその人の自己選択と自己決定が基本です。「正しいことだからやりなさい」と強制されることになれば、その人にとっては苦痛になることもあります。もちろん「誰もが自分のことだけを考えていれば良い」のではありません。「自分が暮らす地域を育成すること」も住民の役割です。

このようなときに大切なことは「自分の気持ちや意見を言うことができる」「他人の意見や気持ちを聞くことができる」関係性ではないでしょうか。

参加できる工夫を

その際に「自分は地域のことを考えるゆとりがない、自分が生きることで精いっぱい」という人もいるでしょう。

また、家族の介護で寝る時間も取れない、地域を考えるより眠りたいという人もいるでしょう。それを「協調性のないダメな人」「地域におぶさる迷惑な人」と嫌い、排除することは共生社会ではなく、強制社会になってしまいます。

寝る時間がないなら無理しないで、「皆で討議した内容をメモで渡すから、時間があるときに意見を書いて」など、できる範囲で地域に参加してもらうよう働き掛けてみましょう。

「もしも、能登半島のような地震が起きたら地域に何を望みますか」「以下の項目に〇をつけてください。取りに来ます」など無理せず地域の共通課題に参加できるよう工夫することも一案です。

住民はそれぞれ体力、資金力、心配事、不安なことが異なります。その人ができる範囲で参加できる仕組みつくりが大切です。参加できない人を、遠くから見守ることも地域の役割の一つです。

人と向き合うことに弱い人、できない人を遠くから見守り、排除しない、強制しない地域社会が共生社会ではないでしょうか。

 

筆者=服部万里子 服部メディカル研究所 所長

監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長