「争い増え、負担重い」共同親権、参院で与党からも懸念
2024年05月13日 福祉新聞編集部離婚した父母によるこどもへの共同親権の導入を柱とした民法改正案に対し、これまで賛成してきた自民党からも懸念が相次いでいる。7日の参議院法務委員会で古庄玄知はるとも氏(自民)は弁護士としての実務経験を踏まえた上で「この法案は、(夫婦間の)争いが発生したら裁判所が判断するという建て付けが多い。裁判所が適切に判断してくれるというのは、現場を知らない机上の発想だ」と批判した。
その理由として、離婚する人が弁護士を探して依頼する労力や経済的な負担の重さ、裁判所のマンパワー不足の問題、結論が出るまでにかかる時間の長さの問題を挙げた。
法案は4月に衆院を通過し、参院での審議も終盤を迎えた。同日は8人の参考人に議員が質疑し、古庄氏は「法案が成立したら、離婚した夫婦間の争いは減ると思うか増えると思うか」と尋ねた。
参考人で、DV被害者支援に当たる、女のスペース・おん代表理事の山崎菊乃氏(札幌)は「争いは増える」と回答。親権を持ったDV加害者が法的な措置を乱発するリーガルハラスメント(法的嫌がらせ)が最大の懸念だと語った。
山崎氏はDV被害によって子連れで逃げる人を保護した警察官が加害者から訴えられたり、被害者の代理人弁護士が懲戒請求の対象になったりした実例を挙げ、「(法的措置を)やる人は徹底してやる」と述べた。
こどもの居所指定権は親権に含まれるため、加害者に親権があれば、被害者支援にあたる人が訴訟を恐れて萎縮してしまう可能性がある。そうした懸念を払拭ふっしょくする仕組みが改正案にないことは、衆院審議でも問題視されてきた。
病院も混乱しないか
離婚後も父母が共に親権を持ち、共同行使することが「子の利益」になるという発想が改正法案の根底にあるが、一方で法的な地位を2人がそれぞれ第三者に主張できることの影響も大きい。
4月25日の参院法務委員会では、看護師であり弁護士でもある友納理緒氏(自民)が、こどもが病院で手術を受ける際の親の同意に関連し、例外的に父母の一方が親権を単独行使できるとする改正案の解釈があいまいだとして問題視した。
その上で「この制度が導入されると、医療機関に混乱や萎縮が発生しないか。こどもの親が共同親権かどうかを医療機関が把握して同意を得るのはとても労力がかかる」などと医療現場の不安を代弁した。