母子施設が「女性支援」 新法の4月施行に合わせ(大阪)
2024年03月08日 福祉新聞編集部大阪府内のすべての母子生活支援施設が、4月1日からの改正児童福祉法と女性支援新法の施行を前に、一丸となって動き始めた。市民や学生を含む女性が利用できる相談窓口を掲載した、専用ホームページを開設。QRコードでHPに誘導する啓発カードやシールを、公共の女性化粧室に配置し始めた。改正児童福祉法の施行に伴って、市区町村に新設される「こども家庭センター」への参画も推進。地域で暮らす妊産婦支援や、子育て世帯への包括的支援を目指す。
「今日、専用サイトを開設しました」
魁プロジェクトチーム(PT)のメンバーが、こう発表した。2月16日、大阪市中央区のマイドームおおさか。大阪府社会福祉協議会母子施設部会(荒井惠一部会長)が主催した、第3回福祉事務所等職員と母子生活支援施設職員との協働研修会での報告だった。
母子施設への入所は、母親が福祉事務所で相談して施設を選び、市区町村と契約する形で成立する。
その窓口職員と施設の職員が互いの理解を深めて、より適切な契約、母子の未来を開く支援の実現が協働研修会の目的だ。
研修会は、大阪市児童福祉施設連盟母子生活支援施設部会と共催しており、「母子施設のオール大阪」の体制が整っている。
女性化粧室、発信の場に
魁PTは、地域のどんな女性も1人で悩まず、状況が悪くなる前に、周囲を気にせず相談できる方法を検討。公共の女性化粧室の活用を考えて、計画を進めた。
専用HPのタイトルは、「あなただけで悩んでいませんか?」。啓発カードや啓発シールのQRコードからHPに飛ぶと(1)母子での困りごと(2)妊娠したかも(3)暴力・暴言を受けている――の三つのカテゴリーが表示される。
そこからクリックを繰り返すと、母子生活支援施設(動画付き)や各市区町村の相談窓口などを紹介した画面に移る。
魁PTは5000枚のカードと200枚のシールを用意して、承諾を得た府内の自治体や大学の女性化粧室に設置を始めた。HP制作費などの費用は、社会福祉法人黎明会(東京都小平市)の助成事業を活用した。
「おためしステイ」も
こども家庭センターの業務の一つとされた「支援を要する子ども、妊産婦等へのサポートプランの作成」についても、話し合われた。
大阪公立大大学院の中島尚美特任准教授は「母子施設は、大人とこどもの両方を見られる唯一の児童福祉施設」と話し、サポートプランを作成する際のこどもへの聴取や記録の取り方についても「母子施設の得意な分野」と指摘した。
そして「見学に来られると入居につながりやすい」という職員らの声を受けて、「(母子の)お試し(ショートステイ)もいいですよね。お試しの話は、国レベルでも出ている」と紹介した。
さらに、「サポートプラン」に関わるためには、市区町村の要保護児童対策地域協議会の実務者会議に入ることが重要だとした。
全国母子生活支援施設協議会(全母協)の会長でもある荒井部会長は「住まいを持つ強みや、インケアで培った職員のスキルを十分に生かす。そのことの周知と支援への参画を自治体にしっかり働き掛けるよう、全母協でも呼び掛けている」と話した。