まひがある人の足のケア〈高齢者のリハビリ 73回〉
2023年12月22日 福祉新聞編集部痙縮がもたらす影響
皆さんは体のケアを意識して行っていますか。歩くことは高血圧や糖尿病などの生活習慣病の予防、脳活性化による認知機能低下の予防、骨に刺激を与えることによる骨粗しょう症の予防など、たくさんの良い効果があると言われています。
体を動かすことはとても重要ですが、動かすだけでなくケアすることも重要です。
脳卒中の後遺症の一つに痙縮という症状があります。痙縮とは手足の筋肉が緊張している状態のことを言います。痙縮が原因で肘や指は曲がり、足は尖足(ふくらはぎの筋肉が緊張し、足先が下を向いたままの状態)になることがあります。尖足になると足裏全体に体重がかからず、歩行が不安定となり、歩く速度が遅くなるなど、歩行に大きな支障をきたす場合があります。
痙縮に対するリハビリはいくつかありますが、その一つとしてストレッチが挙げられます。痙縮は筋肉の柔軟性の低下が要因の一つと言われているため、筋肉の柔軟性を維持することで進行の予防につながります。
そこで今回は、まひがある人がいつまでも歩き続けるために、簡単にできるステップ運動を用いたストレッチを紹介します。
痙縮を予防するステップ運動
ストレッチにはいくつかの方法がありますが、痙縮に対しては足の裏に体重をかけながら伸ばすことでふくらはぎの柔軟性維持が期待できます。
まず、まひ側の足を一歩前に出します=写真(左)。次に反対側の足を一歩前に出し、後ろ足(まひ側)のふくらはぎをしっかりと伸ばします=写真(右)。ポイントとしてはできるだけ体を起こして、後ろの足のかかとが浮かないようにゆっくり(1、2と声に出して2秒ほどかけて)とステップすることが重要です。ふらつきがあるなど、バランスが取りにくい人は手すりやいすなどを握って安全に行ってください。
この運動を10~20回繰り返し行うことで、ふくらはぎの筋肉が伸ばされ、柔軟性を保つことが期待できます。ふくらはぎの柔軟性を維持することで、重心を前に移動でき、スムーズに反対の足を前に運ぶことができます。それにより、歩行が安定し、歩く速度も保たれ、歩く機能を維持することにつながります。
今回は脳卒中の人を中心にストレッチを紹介しましたが、ふくらはぎの柔軟性は高齢者にとって重要です。ふくらはぎが硬くなるとつま先が上がりにくくなり、つまずきや転倒につながる可能性があります。転倒予防という観点からもふくらはぎの柔軟性を維持することは重要です。
ぜひ皆さんも体のケアを意識したストレッチを実施してみてください。
筆者=尾崎信行 香椎丘リハビリテーション病院
監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長