最賃増分の確保を 千葉・柏市の養護ホームが運営費で要望

2023年1109 福祉新聞編集部

千葉県柏市で唯一の養護老人ホーム「ひかり隣保館」(社会福祉法人千葉県厚生事業団、渡部昭理事長)は、10月の最低賃金引き上げに対応した養護老人ホームの運営費を確保するよう市に要望している。現在、自治体は来年度予算の編成作業をしているため、佐藤高市・施設長は「このタイミングを逃すと対応してもらえない。正念場だ」と強く語る。

 

養護老人ホームの運営費は、2005年度に国庫補助から一般財源化(地方交付税)された。現在は国の基準に基づいて養護老人ホーム所在地の自治体が決めるため、自治体への相談や要望が欠かせない。全国老人福祉施設協議会の調査によると、22年2月からの介護職員らの処遇改善を受けて対応した市町村は6割にとどまった。

 

千葉県の最低賃金は10月から1026円となり、前年から42円(4・27%)上がった。06年(687円)と比べると1・5倍増えているが、運営費にそれに見合った手当てがされてこなかった。

 

法人では、県の最低賃金額と市職員の給与額の推移(06年から18年分)をまとめた資料などを作り、「市職員の給与は上がっているのに養護老人ホームの運営費は対応していない」ことを示し、市に理解を求めている。

 

また具体案として、最低賃金引き上げ分(4・27%)を運営費の中の処遇改善加算に加えたケースと人件費に加えたケースを、それぞれ金額を表にして提示。目安を示して説明している。

 

養護老人ホームでは自治体から措置されて入所者を受け入れていることもあり、「運営費を交渉できると知らなかった」(水野敦子・主任事務員)という職員も多い。

 

法人では11月上旬に市老人福祉施設連絡協議会が市長への要望の中で改めて説明する。養護老人ホームが地域のセーフティーネットの役割を果たせるよう、入所判定委員会を定期的に開催し、適切に入所者を措置することも求める。